扶養の壁は、いくらまで働ける?と多くの方にとって気になるトピックです。
2024年はいわゆる106万円の壁が再拡大されたり、年金の財政検証によって今後の検討案が公表されたことで、今後の働き方がより一層気になった方も多いのではないでしょうか?
扶養の制度が今後どうなるかについて、特にSNSやYouTubeなどで誤情報が拡散されることがあり、混乱や不安からのご質問が相次ぎました。
間違った情報によって誤った選択をすることのないように、この記事では現在確定している変更点と今後の見通しについてわかりやすく解説していきます。
厚生労働省が発表した財政検証のオプション試算による、今後の検討案をもとに動画で解説しました。
要点のみ知りたい方はこの先へお進みください。
1扶養の壁が70万円に?誤情報にご注意を!
最近「扶養の壁が70万円に引き下げられる」という噂がSNSで話題になっていました。
しかし、これは間違った情報です。年収の壁が70万円になるという決まりはなく、厚生労働省は現在この金額の検討もしていません。
SNSでは時折不確かな情報が広まることがあり、煽り的な情報であることが多いです。
実際には、2024年10月から106万円の壁に関する規則の拡大が行われたところまでしか決定はしていません。
2019年の財政検証のときには、月額5.8万円(年額約70万円)という試算も出ていましたが、5年後の今年(2024年)の財政検証ではこの方向での検討はされていません。
誤った情報、不確かな情報で人の目を引くSNSの情報などは、別のサービスなどへの誘導を目的としていることもあります。
扶養の壁に関する情報は、必ず信頼できる公的な発表を確認することが大切です。
2024年10月の扶養の壁の適用拡大
2024年10月からは、「106万円の壁」と呼ばれる規則がさらに多くの企業に適用されました。
これは従来、従業員が101人以上の企業にのみ適用されていた106万円の壁が、2024年10月からは従業員が51人以上の企業にも適用されることになったというルール変更です。
この適用拡大によって、月額8.8万円・月20時間以上などの基準で働く人のうち社会保険に加入する人が増えたということです。
(106万円の壁についての詳しい説明はこちらの動画で→扶養内パートの106万の壁!【2024年から対象拡大】)
このルール変更により、より多くの人が106万円の壁の対象になったことは事実ですが、次の段階としてこの106万円という金額が70万円になることは決まっていません。
なんで106万の壁が拡大しているの?
106万円の壁を拡大する背景はいろいろな理由があります。
例えば、社会保険に多くの人が加入することで年金財政が安定し、同時に加入者にとっても現役中の万が一(障害や遺族になった場合)や老後の保障が強化されるというメリットがあります。
また、同じ職場で同じように働く人たちが、企業規模によって社会保険に加入できるかどうかが異なる不公平を解消することも目的の一つです。
特に女性は扶養内でいる期間が長い場合、老後の年金額少なく、離婚や死別した場合に低年金の状態に陥り、老後の貧困につながります。それを防ぐ効果もあります。
時代とともに社会が変わっている(働く年数が伸びたり、生存している年数が増えている、生き方が多様化しているなど)以上、制度もそれに合わせて変更していく必要があるからです。
年収の壁がどうなるか?4段階の検討案はこれ
政府は、年金の財政を定期的にチェックし、その結果をもとに「オプション試算」を行っています。
年金の適用拡大(106万円の壁)は年金の財政にとってもよい影響をもたらしました。
そのため、以下の4つの段階的なパターンをもとに、扶養の壁が今後どのように拡大するかが議論されています。
拡大した場合どうなるかの人数の試算がこちらの図です▼
厚生労働省:将来の公的年金の財政見通し(財政検証)
国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しの関連試算-令和6(2024)年オプション試算結果 より抜粋
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html
一番上を見てもわかる通り、導入の段階ではなく「拡大を行った場合の」と書いてあります。
あくまで対象となる人数がこの4段階でどう変わるか試算している図です。
まず、現状は水色部分4590万人がフルタイムで社会保険に加入しているということです。
ここから拡大を進めるとどう変わるでしょうか?
1段階目:会社が小さくても8.8万+20時間を超えたら加入
第1段階は「企業規模要件の撤廃と非適用業種の解消」(図のA部分)となっています。
つまり(従業員が51人未満の企業や今は対象になっていない個人事業主のもとなど)法人なら何人でも、個人事業主の場合は従業員5名以上の会社で雇われて週20時間以上(月8.8万円以上)働く場合は社会保険の加入対象とするということです。この時点では学生は除外されています。
2段階目:週20時間以上なら月8.8万円超えなくても加入
1段階目+「賃金要件の撤廃もしくは最低賃金の引き上げ」(図のBの部分)
これは、賃金の8万8000円の要件を撤廃するということですので、週20時間以上働いたら月の給料が8.8万円未満でも社会保険に加入になります。
もしくは最低賃金を引き上げることで週20時間働く場合は自動的に8.8万円を超える(時給で言うと1050円程度)ようにするということです。
3段階目:どこで働いても週20時間以上なら月8.8万超えなくても加入
2段階に加えて「5人未満個人事業所」も対象とします。(図のCの部分)
つまり従業員が5人未満の個人事業主のもとで働く人も週20時間以上働けば(月8.8万円に行かなくても)社会保険に加入。
これはつまり「雇われて働く人は、週20時間以上働くなら原則社会保険に加入」という形になります。
4段階目:週10時間以上の労働者も対象に
第3段階目に加え「週10時間以上の全ての被用者」が加入の対象になります。(---の部分))
つまり、雇われて週10時間以上働く人が社会保険に加入になります。ここには学生も含まれます。
もちろんこれらは、この通りに拡大していくと決まっているわけではありません。
あくまでこの4段階で見ていくと、どれくらいの人数が対象となるのかを計算したものです。
実際に実行されるかどうかは未確定であり、さらに議論が必要とされています。
これからの働き方を考えるときに大切なこと
扶養の壁や社会保険の適用条件が変化しても、最も重要なのは自分の働き方の軸をしっかり持つことです。
家計にいくらの収入が必要?いまのままで将来の自分の年金はどれくらい貰える?万が一の公的な保障は足りている?
自分は働きたい?なんのために働きたい?
など、「扶養でいるかどうか」「いくらまで働けるのか?」と、扶養の壁に合わせて働き方を変えるのではなく、自分がどう働きたいのかを重視して、必要に応じて制度に対応していくことが大切です。
社会保険、とりわけ年金の仕組みは知らない人にとっては理解が難しいことも多くあります。
そうなるとどうしても不確かな情報に振り回されがちです。
今後も扶養の壁や社会保険に関する情報が更新される可能性がありますが、信頼できる情報源からの発信を確認し、正確な情報に基づいて選択していきましょう。
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