ー この記事を書いた人 ー
ファイナンシャルプランナー 塚越菜々子

塚越 菜々子 「FPナナコの部屋」主宰

保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナー。日本FP協会認定CFP®。「働く女性のお金の不安を解消したい」思いで、主に共働き女性に公的制度や家計・投資などお金の話を伝えています。

公的年金・健康保険

年金なんてどうせもらえないは嘘。理由を解説!

  • 年金なんてどうせもらえない
  • 年金なんて自分たちのころにはほとんどない
  • 年金の受け取りはどんどん後ろにされて、受け取れないまま死ぬんだ

もし、こんなことを言っているとしたら大変!
誰かに聞かれたら超はずかしい勘違いですよ~!

ナナコ
とはいえ、実は私もずーーっと「年金はもうヤバイ」と思って育ってきました(^_^;)

でもあるとき、ハタ、と気づいたんです。
なんで年金破綻するって思っているんだろう。誰にも教わってないのに・・・・

そのイメージは「メディア」から得た知識、あるいは保険や投資信託などの金融商品を売りたい人のセールストークからだと気づきました。メディアの知識は必ずしも正しいことばかりではなくて、ものすごく偏ったことが道されていることもあるということはすでにお気づきだと思います。

実際にはどうなんだろうと気になり、FPになり、年金について学んで気づいたのは

  • 年金が破綻するなんてありえない!
  • 間違ったイメージを持つのは、年金について何も知らないからだ!

ということです。

年金制度が今後どうなるかは、誰にもわかりません。
だからこそ、まずは「年金」が一体どういう仕組みなのかを知ってみてください。

文字で読むと少しややこしい内容なので、年金の簡単な仕組みをお話して、その後に「私が思う年金の意義」「年金は破綻するという人に知ってほしいこと」をお話しました。

動画で見る場合はこちらからどうぞ!

年金は老後のための積立制度ではない

年金は老後のためのものだと思っていることが多いかもしれませんが、実はそれだけではありません。

年金は「保険」です。

原則日本に住む20歳以上の人が加入する年金には3つの保険の機能がついています。

1つめは「遺族年金」
万が一家族の大黒柱の人が死んでしまってお金に困るリスクに備える保険です。

2つめは「障害年金」
死んでしまったわけではないけれど、働けなくなって収入が途絶えてしまうというリスクに備える保険です。

3つめは「老齢年金」
これは保険とは違わない?と思うかもしれません。老齢年金は、思ったより長く生きてしまってお金が足りなくなってしまうリスクに備えうという、こちらも保険です。

そう考えるとやはり「年金は保険」こう考えるとすごくシンプルに理解できるはずです。

保険というのは契約してお金を払い、参加した人しか受け取る権利がありません。加入していない、あるいは掛け金は少ししか払っていないのに保険が全然下りないと怒るのははおかしいということはわかるかと思います。
老後に年金が少ないと騒ぐ人がいたらとしたら、それは払った保険料が少ないからにほかなりません。

年金はつい「いくらもらえるのかな」と考えてしまうものですが、老後の年金はどこかの誰かからもらうものではありません。もらえるものというと人と差がつくと不公平感を感じてしまいますが、年金は自分が払った分だけ受取る権利があるもの。つまり自分で保険料を払って加入して「作っていく」ものなのだと思うことが大事です。

20歳より前の障害だけは例外

加入してメンバー入りした人だけが受け取る権利がある3種類の年金ですが、例外として障害年金に関しては20歳より前に障害を負っているときは受け取ることができます。
本来、年金で加入するのは20歳からですが、例えば生まれつきの障害、あるいは子どもの時の病気やけがで障害を負ってしまったときに限っては、20歳より前の加入してない時のものだとしても保障されるという決まりになっています。

少子高齢化だから年金は破綻するは誤解

万が一の時の遺族年金、障害を負ってしまったときの障害年金、長生きに備える老齢年金。これらのリスクに備える保険に全部自分で加入しようと思うと莫大な保険料が必要になります。

ではなぜ年金が破綻すると漠然と感じるかというと、キーワードは「少子高齢化」ではないでしょうか?
少子高齢化で支え手が減るから破綻する。そんなイメージを持っていませんか?

実はこれも誤解です。

確かに年金は自分のために自分の財産を積み立てていくというものではなく、自分が納めた年金が今のお年寄りの受給額に回っていくという「賦課方式」を取っています。ということは、払う人(現役世代の人)がいる限り年金制度がなくなるということはありません。全員がお年寄りの国はないですから。

さらにいうと、「年金の支え手は若い人、年金を受け取るのはお年寄り」という単純な構造ではありません。
女性やまだまだ元気な高齢者も支え手に回ることで、より年金制度を安定させながらそれぞれ受給できる年金を増やすこともできます。

さらに、それに加えて年金には積立金としてプールされているお金があります
団塊の世代と・団塊ジュニア世代が年金の受給者である20~30年は厳しい時期もありますが、それにこの年金の積立金を活用することで、その後は保険料収入と給付のバランスは再び整っていく見込みとなっています。

預かった年金がそのまま支払いに回るならそもそもプール金は必要はないのですが、過去に貯まった分があるためにそれを運用しています。この運用も成績好調で2001年から見ても100兆円増えています。もちろん運用ですから上がったり下がったりはして当然なのですが、メディアではその下がったときだけ「含み損が発生している」ことを大きく取り上げて騒いでいることが多いのです。
ちゃんと決まりを知っている人は右肩上がりで増えていることは一目瞭然です。

法律で年金の所得代替率は50%を切らないようにしているので、突然年金が「ほとんどもらえなくなってしまう」ということもありません。

少子高齢化対策はすでに完了している

とはいえ、もうしばらくの間、少子高齢化が進んでいくことは事実です。
ただし、その少子高齢化が年金に与える影響については2004年に対策が仕組化されてもう解決済みの問題です。
それを「少子高齢化だから年金が破綻する」と言っているのは何を今さら?と言わなくてはいけません。

年金の払い手が減る・貰い手が増える。それで制度を成りたたせるためには保険料をいっぱい払わないといけません。ただそうなると今度は現役世代が生活に困ってしまいます。だから私たち現役世代が払う保険料はもうこれ以上上げませんと決めました。

そのままだと年金制度が回っていかないので、この保険料収入と給付のバランスを取るために大きくは3つの対策が決められています。

対策1:年金受給額は物価ほど上げない

年金は物価と連動して支給額が上がる決まりになっていますが、物価が上がってもそれと同じようにはあげません、というのが一つ目の対策です。この仕組みをマクロ経済スライドと言います。

年金というのは払う期間+受け取る期間を考えるととても長い時間がかかります。20歳から90歳まで年金制度に加わるとすると70年間のプロジェクトです。その間に世の中の物価は変わっていきます。
例えば初任給が1万円だった時代におさめた一か月の保険料はほんのわずかで例えば100円だとしましょう。40年後に受け取るときに「100円しか払ってないから毎年70万円も渡せません」と言われたら生活に困ってしまいます。
だから年金は物価に応じて上がるようになっているのがそもそもの仕組みです。

ただ、これを物価が上がった分と同じだけ年金の額を上げることはしません。少し押さえて給付します、というのがマクロ経済スライド。
受給する人にも協力してもらって年金制度を守っていきましょう、という仕組みです。制度の支え手だけが頑張るのではなく受け取る側も痛み分けをしてもらいます。ひとりひとりの目減りする負担額は小さくおさえられていますが、年金を受け取っている人が多いからこそ大きな影響があります。

対策2:受け取り年齢を柔軟にする

二つ目の対策は年金の受け取り開始の年齢幅を広げるという対策です。

年金の受け取りスタートは私たちは65歳が基準になっています。この65歳からスタートする年金の受け取り開始年齢を幅広にして、受け取り開始をもっと後にすることができるという対策です。2020年5月には受け取り開始を最大75歳まで後ろ倒しにできるようにすることが決まりました。

これも、75歳という年齢が新聞やニューで出たとたん「ほらみろ、受け取りを遅らせて受け取る前に死ねっていうのか」と騒いだ人がいましたが、これは全くの誤解です。選べる期間が広がっただけで、65歳から受け取りたければ満額を受け取ることができます。

65歳で受け取る予定が5年後ろ倒しにしてくれれば受給する人は減るので年金の財政は安定します。
でも私たちが一方的に年金制度のために年金受け取りを遅らせるのでは、一方的に我慢することになってしまいます。
そのため、受け取り開始を後ろ倒しすると年金を増やすことができる機能も付いています。

今の60歳65歳というのは元気です。働ける人が多いですから元気なうちは働いて年金を受け取るのは少し待っておく。
働くのをやめたときに増えた年金をそのまま死ぬまで受け取り続けることができるようになっているのがこの対策です。

対策3:支え手を増やす

年金の支え手を増やすという対策もとられています。要は保険料を納める人を増やすということです。
厚生年金に加入できる条件を緩和して、パートで短い時間で働く人も加入できるようにします。若い人だけではなくて60歳過ぎても働ける人は働いて厚生年金に加入して、年金制度の支え手側になってもらいます。

もちろん一方的に支えるのではなく、支払った分だけは自分の老後の年金も増え、公的保障も手厚くなるわけですから、支え手側にいる人にもメリットがあります。

自己責任で貯めればいいは違う

年金制度は信用できないから無くしてしまい、各自自分で責任をもって自分の分は貯めていけばいい。自分はちゃんと対策をしているから、ちゃんと備えて払っていない人が悪い。そんな人のために自分がお金を払うのはバカバカしい。
そう思う気持ちもわからなくはありません。

ただ、私はそれは少し想像力の足りない発言ではないかなと思っています。

「自分は努力している努力してお金を貯めてきたんだ」と思うかもしれませんが、そもそもそうやって努力すれば報われると思えること自体が恵まれた立場なのだと思います。
例えば、歩道を安全に歩いていたのにもかかわらず車に追突されて歩けなくなってしまった人、あるいは生まれつき障害を持っている人に向かって「自己責任です」とは言えません。

私たちは子どもを持ち後世に命を残す親になったわけですから、頑張りたくても頑張れない人がいること、そういう人を年金制度で少しでも守ってあげることができること、そういう制度が機能している国に生きていることを誇りに思っていただきたいなと思います。

そして私たちはそういう優しい制度を、今後にもちゃんと残していくんだという気持ちでいていただきたいと願っています。

結論:年金制度は破綻しない

結露として、年金制度は崩壊しません。

不公平だと思う部分も不備があるなと思う部分も正直あります。年金だけで老後まで豊かに暮らしていけるというのは幻想です。
ただ、福祉国家として社会全体を守るための年金制度は様々な対策をして、今後私たちの子供が生きる時代まで維持できるようになっていますし、何よりそれを維持していくのは私たち自身です。

キャッチーに関心を引きたいメディアや、老後不安をあおりたいサービス販売者の情報を鵜呑みにするのではなく、年金の基本をまずは知り、そこで足りない部分を自分でも努力(自助)していくことができれば、みんなが安心して暮らせる社会が作れるのではないでしょうか。

FPナナコの「お金のメルマガ」ご登録特典

働く女性の笑顔で貯まる15の習慣無料プレゼント!

働く女性のお金の不安を解消!
FPナナコの「お金のメルマガ」
ご登録者全員に「貯まる15の習慣」をプレゼント。
貯まる仕組みを創り出す
7日間のレッスンと共にお届けします。

詳しくはコチラ

-公的年金・健康保険