ー この記事を書いた人 ー
ファイナンシャルプランナー 塚越菜々子

塚越 菜々子 「FPナナコの部屋」主宰

保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナー。日本FP協会認定CFP®。「働く女性のお金の不安を解消したい」思いで、主に共働き女性に公的制度や家計・投資などお金の話を伝えています。

iDeCo・NISA

55歳でiDeCoを始めるのは遅すぎて意味がないですか?【相談事例】

老後資金を貯めるためには最強のツールと言われるiDeCo。
でもすでに50代・50代後半なんだけど、いまさらiDeCoを始めるのは意味があるかしら?
そんな風に悩むこともあるかもしれませんね。

ママ美
★今年の夏で55歳。60歳まで残り5年しかありません... この状況でiDeCoを始めること、どうなのか??

こんなご質問をいただいたので、一緒に考えていこうと思います。

iDeCoの加入者と運用指図者

まずはiDeCo2種類の加入区分を知っておきましょう。「加入者」「運用指図者」です。
加入者はお金を積み立て運用している人。
運用指図者は積立はしない(できない)けれどiDeCo口座の中にあるお金を運用している人です。

iDeCoは年金制度の3階部分のイメージですが、1階(国民年金)の部分の保険料を払っていないとお金を積み立てる(加入者になる)ことができません。
そのため20歳~60歳まで加入する1階部分の国民年金が終わるとiDeCoを掛けることができなくなり、加入者から運用指図者に区分が変わります。また、20~60歳の間でも何らかの理由で掛け金を積み立てることができなくなると「運用指図者」へ変更になります。

ただし、2022年5月以降に60歳を過ぎてももiDeCoを続けられる人がいます。
それが「国民年金の任意加入者」と「60歳を過ぎても厚生年金に加入して働く人」です。

過去に猶予や未納などがあり、60歳の時点で国民年金の満タンである480カ月になっていないときは、自ら申し出ることで480カ月になるまで国民年金に加入することができる制度が「国民年金の任意加入」です。

まずは、ご自身がいつまでiDeCoの加入者でいる(いられる)かを考えてみましょう。
60歳までの5年だけ積み立てられるのか、65歳までの10年まで積み立てられるのかによって倍の期間の違いが出ます。

50代でiDeCoを始めるか検討するためのポイント

今の年齢が55歳ですと、上記の通り今後いつまでiDeCoの加入者でいられるのかがまずは大事なポイントとなります。
さらに、それ以外のチェックポイントも見てみましょう。

積立が終わってからもかかる手数料

iDeCoは口座の維持管理に手数料がかかります。
積み立てをしている加入者のうちは最低で「月171円」。積立を終えた後運用しながら受け取りを待っている運用指図者の期間は最低「月66円」の手数料がかかります。iDeCoを開設している金融機関によってはさらに別途手数料がかかることもあります。
手数料が高い金融機関では月に500円以上の手数料がかかりますから、iDeCoの中でその手数料以上お金を増やすことができなければ、財産が目減りしてしまうことになります。

iDeCoは掛金に上限があるため、積み立てる期間が短いケースではiDeCoの中に入れられるお金が少なく、さらに受け取り時期が近いからとリスク(値動き)の小さめの商品を選ぶと、お金も増えにくくなることがほとんどです。

少ない資産でも手数料以上の運用ができそうかも大事な判断ポイントとなるでしょう。

節税はどの程度重視するか

iDeCoは掛け金が所得控除になります。
今の収入(所得)が多く、iDeCoの掛け金での節税効果が高いのなら短い期間でもメリットが大きいかもしれません。

仮にiDeCoの掛け金を年間276,000円として、所得税率が20%住民税が10%だとすると年間の節税額は82,800円です。
10年間積立が出来れば80万円以上の節税になりますから、掛けている期間にどの程度節税が見込めるか考えてみましょう。

専業主婦や扶養内パートで働いていて、所得税や住民税の負担がそもそもない・少ないケースでは節税のメリットも少なくなります。

いつごろ引き出して使いたいか

iDeCoは60歳以降の引き出しが原則ですが、加入期間が短い人は60歳で出すことができないというルールがあります。

例えば55歳から始めると60歳時点での加入期間が「4年以上~6年未満」になりますので、ルールに従って最も早い引き出し年齢は『63歳』となります。この年齢より前に使いたいお金ならiDeCoに積み立てるのは得策ではありません。

(※)過去に確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)に加入していたときは、この限りではありません。

受け取り方と受け取り時の家計状況

iDeCoに入れた資産を受け取るとき、一時金で受け取れば「退職所得」として計算されます。分割で受け取るときは「雑所得(公的年金等)」という分類での税金計算です。

どちらも税金がかかりにくくなっていますが、iDeCoのほかに会社の退職金がどの程度いつ受け取れるか・iDeCo以外の公的年金や企業年金の受け取りがいくらぐらいあるかによっても税金の計算方法・かかり具合が違ってきます。会社の退職一時金や公的年金が多いときは、iDeCoの受け取り方によっては税金が多くなることもあるので注意しましょう。

iDeCo単体で考えるのではなく、老後資金全体での計画が肝心です。

老後のマネープランを確認しiDeCo以外も検討を

55歳からのiDeCoは一般的に加入期間が短くなります。
積み立ての元金が少なければ運用で増やせるお金も限られているかもしれません。ですが、運用益(増えた金額)が非課税になる事や、掛け金が全額所得控除を受けられるなど税制優遇のメリットは大きいです。

その税制面のメリットが生かしきれるかは、やはり老後のマネープラン次第です。

ほかに資産があり、60代前半でiDeCoの資産が引きだせなくても問題がない場合や、掛金による節税効果が期待できるときは55歳からのiDeCo利用も十分意味があるでしょう。

iDeCo以外の運用も視野に入れる

60歳までしか積み立てる予定がない、iDeCoで積立できる掛金の額が少ない、運用経験が浅く手数料分を上回る運用をする自信がない、扶養内などで所得控除のメリットが生かせないなどのときは、55歳からiDeCoを始める”旨味”はあまり大きくないかもしれません。

ただし、人生100年時代を考えると55歳から運用自体を始めることは決して遅くありません

もし税制面のメリットがあまり大きくないようなら、iDeCoにこだわらず、つみたてNISAも検討してみてはいかがでしょうか?
つみたてNISAは口座維持に手数料はかかりませんし、運用益非課税はiDeCoと同様です。積立できる額は年間40万円と限度がありますが、引出には制限がなく自由に引き出すことができます。

まずは老後のライフプランとマネープランを立てましょう。
家計の状況と年金の見込み、その時の働き方を踏まえたうえで資金計画の一端として「iDeCoというツール」を使うのがふさわしいのか判断できるといいですね。

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