103万円の壁が話題になっていますが、この103万円の壁はパート主婦より親に扶養されている学生バイトへの影響が大きいです。
主に大学生が、最も103万円を気にして働く必要性が高いかもしれません。
今回は学生が親に内緒で(あるいはうっかり)103万円を超えるとどうなるか整理していきましょう。
なお、この記事では雇われて働き「給料」を得るケースについて話しています。
ウーバーイーツのような業務委託による収入は計算方法が違いますのでご注意ください。
なぜ103万円?2つのポイント
学生における103万円の壁のポイントは2つあります。
①本人に所得税がかかり出す基準
②親の税金上の扶養でいられる基準
①学生本人に所得税がかかり出す基準
103万円の内訳は「給与所得控除55万円+基礎控除48万円」となっています。
控除というのは「差し引く」という意味です。
103万円のアルバイト(給与)収入は、給与所得控除の55万円を差し引いて「所得48万円」です。
そこから、基礎控除の48万円をさらに差し引くと0になり、所得税をかけるモトが0になるため、所得税を支払う必要がありません。
もし、基礎控除以外に差し引けるものがある場合は、103万円より多く収入があっても税金がかからなくなります。
学生が差し引ける代表的なものは「勤労学生控除」です。
一定の学校の学生で、年間の収入が130万円以下なら、勤労学生控除27万円を受けることができます(年末調整や確定申告で申請します)
No.1175 勤労学生控除(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1175.htm
【例】
バイト収入120万円-給与所得控除-55万円-基礎控除48万円-勤労学生控除27万円=0
収入103万円以下なら、学生本人に所得税は発生しませんし、勤労学生控除を申告すれば130万円まで所得税はかかりません。
もし仮に勤労学生控除を使えなくても、例えば110万円稼いだ場合に負担することになる所得税は3500円程度です。
(バイト先で年末調整をすれば、バイト代から天引きされて納税が完了するのが一般的です)
②親の税金上の扶養でいられる基準
①に関しては本人の問題です。130万円なら所得税は発生せず、発生したとしてもそれほど多くはありません。
ただし、こちらの「親の税金への影響」はそう簡単ではありません。
子どもを養っている親は、「扶養控除」を申請することで税金計算の優遇を受けています。
扶養控除を受けることができる子どもの条件は「所得48万円以下」であることです。
No.1180 扶養控除(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
103万円から給与所得控除の55万円を引いた金額が48万円です。
つまり、104万円働いてしまうと104-55=49万円。扶養控除を受けることができなくなります。
学生本人の自分の税金を計算するときのように、勤労学生控除や基礎控除などを引くことはできません。
超えてしまったら、親は扶養控除を受けることができなくなります。
特に19歳~22歳までの子ども(学生であるかは問わない)は、特定扶養親族と呼ばれ、親は大きな控除を受けています。
そのため、103万円を1000円でも超えただけで、親への税金の負担が大きくなります。
どれくらい親の税金が増える?
扶養控除が使えなくなると増える親の税金は、親の所得税の税率によります。
目安として、年収500万円程度の場合は8万円弱
年収600万円程度の場合は11万円弱、税金(所得税・住民税)が増えることになります。
実は超えてしまっていたらどうなる?
子どもの収入が103万円以下(所得48万円以下)であると思っている親は、会社の年末調整で子どもの扶養控除を受けています。
実は子どもがその額を超えていた場合、本来受けられないはずの子どもの扶養控除を受けるという虚偽の申告をしていることになります。
子どものバイト先も、親の会社も、年末調整終了後に税務署や市役所に「誰にいくらの給料を払い、税金を徴収したか」という情報を送っています。
それをもとにチェックが行われ「子どもの所得が48万円を超えているのに、親が子供の扶養控除をしている」ことが分かった場合、控除を受けた親に確認を行います。
税務署は親の会社に「扶養控除等の見直しについて」という書類を送り、会社は事実確認と間違っていた場合は是正(ぜせい)の手続きを行うことになります。
つまり、親が会社で間違いを指摘される、ということです。
事実103万円を超えていた場合、支払いが足りなかった税金を親は会社を通じて支払い、訂正をしなくてはいけません。
扶養の間違いが確認されたときは、3年分ほどまとめて調査されることもあります。
気づかれていなかった3年前まで実は超えていた場合、納税額が大きくなることもあります。充分に注意しましょう。
ほかにもこんな影響があるかも
所得税の納税が足りなかった分は、支払えばそれで終わりです。
ただし「子どもが扶養を外れていた」ことで、ほかにも影響が出てくることもあります。
給料の扶養手当の返還
会社によっては、子どもを養っている人に扶養手当などを支給していることがあります。
年末時点で扶養に入れないことが判明すると、さかのぼってそれを会社に返還することになります。
月に1万円だとしたら年間で12万円を返さないといけません。
何年も遡ることになると、大きな金額の支払いが発生してしまうかもしれません。
大学・高校無償化、所得制限への影響
大学の無償化(給付型奨学金)や高校無償化(就学支援金)など、親の所得制限が設けられている制度もあります。
その親の所得制限を計算するときに「子どもを何人扶養しているか」は金額に大きな影響を与えます。
19歳~22歳までの子の扶養は控除額が大きいため、これが無くなることで所得制限に影響し、学費の支援が受けられなくなることもあります。
本人はもちろんのこと、例えば高校に通う弟妹の学費に影響が出るかもしれません。
親と話し合って責任をもって管理しよう
103万円の壁の引き上げの話題が出ていますが、この記事を書いている時点ではまだ制度は変わっていません。
また「103万円の壁の引き上げ」といっても、本人の税金がかからない範囲を広げるのか、扶養でいられる範囲を広げるのかもまだ定かではありません。
今のペースで働くと超えてしまいそうな場合は、早めに親に相談してどうするか話し合うことが大切です。
年末になって超えていることが分かった場合も、すぐに親に伝えて修正してもらうことで、税務署からの指摘を待たず訂正することができます。
(年末調整に間に合わなかった場合は、年明けに親が確定申告をすれば大丈夫です)
アルバイトをする理由は様々ですし、絶対に越えてはいけないというものではありません。
ただ、親の税金上の扶養でいる間は、外れることによっていろいろな影響が考えられます。