公的保険アドバイザーの一人として、普段は公的年金について一般の生活者向けに個別&セミナーでお届けしています。
そんな公的保険アドバイザー協会で第一回目のフォーラムが開催されました。
私、何かの学びに参加するとき、一番頭の中にあるのは「この話はお客様にどう役立つか」です。
私が楽しいとか勉強になるかは二の次で、これをどうやってお客様に還元するべきか、そればかり考えています。
そう考えると、今回のフォーラムの内容は「私がお客様にシェアすること」というのはそんなに多くないのかもしれないとは感じています。
とはいえ私個人としては参加してとてもよかったので、今日は「記事」というよりは「菜々子のコラム」としてお付き合いください。
もしFPの方が見ていてくれて、そのお役に立ったらいいな。
これからの金融サービスのあり方
公的保険アドバイザー協会の会員さんは、いわゆる保険屋さんが大半です。私はなぜか公的保険アドバイザー東京支部のコアメンバーとやらに入れていただいているものの、正確な数字は忘れちゃいました(笑)
フォーラムの中でしばしば出てくる「我々」というのは大半は保険を販売する人なんですね。
フォーラムの内容は大きく2つに別れています。
前半のパネルディスカッションは「老後2000これ問題の本質とこれからの金融サービスのあり方とは」
金融サービス提供者に向けての内容ですね。
公的保険アドバイザー協会の土川代表のこんな話から始まりました。(土川代表の「土」の字は上に点がついてますが、出ないのであしからず・・・)
生命文化センター調べによると85%の人が老後に不安を抱いている。そしてその不安の内容の80%が年金に対するものである。
老後に安心して暮らすためのベースである年金自体が不安に感じられてしまっている。
その理由は2つ
1:「年金=保険」という認識不足や誤解。
年金が保険であると知れば「いくら払っていくら戻るのか」や「いつもらったら得だ」という考えになりようがないはず。
2:様々な年金の情報が「モデルケース・平均値」で論じられていること。
「所得代替率が50%」という言葉が「老後2000万円不足」というのと同様に、一人歩きしてしまって、実際に”自分の年金がどうなのか”という理解ができていない。
それを改善するために、公的保険アドバイザーが「ねんきん定期便に基づいた金融サービス」を土台とし、その上にある個人の選択はその他民間サービスを利用していく。金融サービス提供者こそが『社会保障の支え手』になっていくべきである。
日本に30万人のドクターがいるように、公的保険アドバイザーも個々の生活者の「お金」の健康を守るために30万人を目指していきたいと思っている、というお話でした。
土川代表のいつものこのブレない姿勢、毎回素敵だな~と思いながら聞いています。
聞いてるこっちも熱くなりますね。
顧客本位のサービス
パネルディスカッションのゲストは、おなじみセゾン投信の中野社長。そしてFWD不二生命保険の友野社長。
それぞれ「資産運用の分野」「保険の分野」を代表するお二人からのお話がありました。
ここでの話の中心は「顧客本位のサービス提供」
保険業界(だけに限らずなのかな)などで相次いで明るみに出る不祥事。最近も某銀行でアレコレありましたよね。
ノルマだの手数料収入だの営業成績だのお客様の意向確認だの・・・・・と色々あるのですが、正直このあたりには私が聞いても「顧客本位だなんてそんなん当たり前でしょうよ」の一言です。
私の仕事には1円も手数料収入がなく、ノルマなどあるはずもなく、それこそ「顧客」からのお代が全てです。
「顧客本位」以外に何に忖度する必要もないし、一体お客様以外の何のために仕事をするのか・・・・と思っているからです。
まあ、業界には業界のいろいろなことがあるのでしょう。
でも、だからといってそれはお客様には関係ないですからね。
私ができることといえば「売りたくない保険を売って我慢してお金を手に入れるぐらいなら、相談料だけで仕事をする努力の方がいいんじゃないの」と言い続けることぐらいです。
そしてそのやり方を伝えていくことでしょうかね。
そんな私の話はともかく、
印象に残ったのは中野社長の
「お客様本位であるということは短期で儲かるものではない」「顧客本位に誠実でいれば、お客様はずっとお客様でいてくれる」「販売目標やノルマという言葉がある限り、顧客本位などなしえない」というお話し。
こういう考え方が当たり前になってほしいし、目先だけ見ず「真っ当な」サービスに妥当なお金を払おうと思えるように、生活者が賢くなっていかなければいけないな、と思っています。
セゾン投信の中野社長のお話も、ぜひたくさんの方に聞いてほしいな。
全国あちこちでお話ししているので、セミナーをチェックしていればお話を聞く機会はありますよ。
国の考える公的年金と年金ダッシュボード
第2部は、衆議院議員の村井氏の講演
「人生100年時代、公的年金と年金ダッシュボードの可能性」
自民党の年金委員会の事務局長だそう。
”国の考える”とまで言うのは行き過ぎかしら。
でも、この大きな流れで進んでいくんだと思います。
年金問題について語られる時、その対策が「現役の負担増 or 高齢者の給付減」のどちらかで議論されるのが、今の日本の閉塞感を産んでいるのではないか、と。
みなさんもご存知の通り、「支え手が減って、支えられる人が多い」から年金の問題が大きくなっている。
だから、75歳までの人に「支え手」側に回ってもらうことができれば、2065年になったとしても今と同じぐらいの負担で成り立つそうです。
えっ、つっても75といえばだいぶお年寄りだよね、と思いつつ、実は「高齢者は若返っている」というデータもあるらしい。
いや、タイムマシンとかそういうことじゃないですよ。
会場が笑いに包まれたのはこちら。
ご存知の、サザエさんの「波平さん」あのおじいちゃん、お幾つだかご存知ですか?
なんと、54歳です。
では、今年54歳の芸能人、ご存知ですか?
こちら。
えええええええええええええ!
で、高齢者といえば65歳から。
65歳の芸能人、ご存知ですか?
こちら
えええええええええええええ!
少なくとも私の思う「おじいちゃん」は裸足でローファーはいてブイブイ(死語?)言わせたりはしませんね。
まあ、芸能人は特別だと言われればそうかもしれませんが、数字より具体的にイメージするって大事。
実際に体力測定などでも昔のお年寄りよりは5歳程度は若返っているという結果だそう。
年齢にしても、家族形態にしても、働き方にしても多様化している昨今、やはりひとつのタイプに当てはめて判断するのは難しいものだと改めて感じました。
少子高齢化社会→人生100年時代
「少子高齢化」この言葉もなじみが深いですね。
こう来たら、もう問題感しか感じません。
この言い方を「人生100年時代」と言い換えることにしたそう。
そうすると→「じゃあどうする?」という考えになる。
問題・問題・問題・・・・ではなく、人生が100年の時代だからどうしていこうか、という「個人の前向きな行動変容を促すため」にこの言葉で色々事を見ていくことになったんですね。
「物事をどう定義するか」それに「どんな言葉を与えるか」の大切さを改めて感じました。
年金ダッシュボードの可能性
このフォーラムに参加する際「年金ダッシュボード」という言葉に聞き覚えがなく、勉強不足じゃよくないと調べたものの、なんだかはっきり出てこない。
でもフォーラムで聞いてようやくガッテンしました。
正確な定義はよくわからないのですが「年金(含む老後資金全般)の情報を一元管理して見れるサイト」みたいなイメージ。
マネーフォワードをご存知だったらイメージしやすいと思うのですが、色々な銀行の情報やクレジットカード情報、ポイントの情報が自動連携されたり、家計簿をつけることで残高管理ができたりしますよね。そんな感じみたいです。
参照:マネーフォワード
公的年金の情報や企業年金・退職金・生活費などを「見える化」することで、もっと「漠然とした不安」を解消することができる。
そういうツールを開発して運用していき、生活者の暮らしに役立てていくことを目標にしているようです。
なるほど!と確かに面白い、と思いつつ、様々な課題もあるだろうな、というのが率直な感想。
データの一元管理はきっと簡単でしょう。
ただし、データ化していて公表されていればね!!!
企業年金がある会社なんて大きな会社だけでしょう?
退職金規定がいつでも自由に見れて、いつでも明確に計算できる企業ってどれくらいだろう。
私が一般の生活者の家計の話を聞いている限り、労働者が退職金をそれなりに計算できるケースなんて多分1割にも満たないと思います。
公的な部分は簡単でしょう。でも民間がどの程度スムーズに参画できるのか・・・・
そして、一元管理できれば安心とまではいかないかな。
だってマネーフォワードで記録をつけているけどなんにもなってない人も山ほどいるもの。
でも、可能性は大いに感じました。
それこそ実現したら、このツールをFPのような専門家が上手にかかわって「年金ダッシュボードインストラクター」ぐらいの資格ができるといいのにね。
データをどう使うか、それは人だからこそ寄り添える部分かもしれません。
税とtaxは同じ意味ではない
最後に、こちらもなるほど!と思ったお話をご紹介します。
日本語の「税」はしばしばtax(タックス)と訳されますが、実は違うのではないかと村井氏。
日本の「税」の語源は「稲穂をはぎ取る」というところからきています。
農民が育てたものをお上が徴収する感じ。その後どうなるかは下々の者には知ったことはない(知りようもない)
しかし、英語のtax(タックス)の語源は「ticket」という意味合いだそう。
そうなると、それを払うことによって「参加する」
やはり日本の「税」という言葉とは意味がだいぶ違う印象です。
私は日ごろから「税金を取られる」という表現はおかしいと思っていますが、現状日本では「税金は悪」「不信感の塊」でしかないようです。
納税することに誇りを感じている人は、少ないんじゃないかな。
公的保険とは少し違う話ではありますが、この点に関してもとても参考になりました。
私は、私の役割は難しいことを学び続けることではない、と思っています。
フォーラムの中で何度も出てきた言葉「情報の非対称性」
私たち「金融の専門家と一般の生活者の間にある格差」を少しでも埋めていくことが私の役割。
今回の公的保険アドバイザーフォーラムは、その思いを新たにすることができました。
次回の開催も楽しみです(^^)