「レシートがない場合は経費にできませんよね?」
経理の相談を受けるときに、よく聞く言葉です。
『経費=領収書』と思っていることが多いですが、領収書がなければ経費にすることはできないでしょうか?
今回は、経費にする「根拠」について考えます。
経費の証拠は自分の手元に保管する
確定申告をして税務署に提出するのは「青色申告決算書」(青色申告)や「収支内訳書」(白色申告)です。
事業の一年間の成績をまとめたものですね。
一枚の紙にそれぞれ売上や経費の種類ごとに合計した数字を書いて出します。
そのほかに、事業の成績などの数字を転記して税金を計算する「確定申告書」という別の紙を提出します。
よくご質問がありますが、通帳やレシートなどは確定申告の時には提出しません。
それぞれ自分でまとめたものを提出し、その数字の元となった証拠は自分の手元で保管します。
税務署が「この数字の根拠はなんですか?」と税務調査に入ったときに出してきて見せられればOKです。
では、その手元に残す「証拠」の段階について考えてみましょう。
証拠の強さには段階がある
証拠にもいろいろあります。
「領収書」はその証拠の最たるものですよね。
最近の「レシート」はよく見ると多くが領収書と書いてあります。
そのほかにもレシートがもらえない場合、自分で作成する「出金伝票」も証拠にできます。
では、そもそも現金払いではない「銀行振込」「カード払い」は領収書がないことがほとんどです。
そんな場合どれを取っておけば、証拠として認められるのでしょうか。
こんな例を考えてみましょう。
『会社に出勤するとして、電車が遅れて遅刻した』
この場合、電車が遅れた証明はなにがあるでしょうか。
◆鉄道会社が発行する「遅延証明」
これがあれば、まず間違いないですね。
相手が決めたルールに則っていなければ発行されない公的に近い書類です。
では
◆鉄道会社のウェブサイトで電車の遅れについて記載されたページを印刷したもの
はどうでしょうか?
◆ポータルサイトの鉄道運行情報の『遅れは〇〇分に復旧しました』
というページをスマホで見せるのはどうでしょう。
◆同じ路線で通勤している同僚も同じように遅刻して「電車が遅れてた」と言っている
のはどうでしょう。
◆普段絶対遅刻しない人が「電車が遅れてたんです」
というのは?
◆普段から締め切りを守らない人が「電車が遅れてたんです」
というのは?
これらの情報を提供して説明された場合、自分が上司だったら、どう思うでしょうか?
これでなければ経費と認められないという線引きはない
このように、信憑性には段階があります。
もちろん事業と関係のない支払いを経費に入れるのはもってのほかですが、適正に経費として支出してあるものだとしたら、必ずしも〇〇でなければいけないという決まりはありません。
見積書・納品書・請求書・領収書があるのなら、領収書が一番しっかりとした証拠ですね。
でももし領収書がなかったとしても、請求書があり、その金額を銀行から支払った振込明細や、通帳のコピーがあれば疑われる余地は限りなく少なくなります。
レシートはないけれど、クレジットカードの控えとカード会社からの請求書があれば、何もないよりはずっと信用されやすくなります。
香典などそもそも領収書が出にくいものは出金伝票と合わせて「会葬御礼」に香典の額を記載して保存しておくなどもできますね。
信用は自分で作っていく
税務調査に入ったとき、調べるのは人間です。
明確な線引きがないものは担当者の主観も入って来ないとは言えません。
まずは疑われないように正しく処理をする。
そして疑われてしまっても「普段からきちんと経理を行っている」と思ってもらえるようにしておくのが何よりのポイントです。