個人事業主になると入ってくるお金は定額で定期的ではなく、自分の活動によって左右されるということを実感する機会が多いのではないでしょうか?
起業のスタート時は、特に「入ってくるお金」について意識が向いてしまいがちですが、「出ていくお金」についてもしっかり知っておかなければなりません。
利益が出ると発生するもの。そうでなくても発生するもの。
思わぬ支払いに慌てないために、給与とは違う支払いの仕組みを知っておきましょう。
利益に応じて支払うもの
◆所得税
所得税
納める相手:国(国税)→自分の管轄の税務署
納める期限:確定申告期限 3/15
計算のもと:課税所得
納める金額:課税所得に対し5~45%
簡単に説明すると、売上ー経費がもうけ(=利益)となります。
税金を計算するときには、この利益のことを『所得(しょとく)』といいます。
青色申告をしていると、この所得から10万円あるいは65万円を引くことができるのですね。
事業の収入(事業所得)以外に、もしパートや正社員などで給料(給与所得)があれば合算されて税金を計算します。
医療費がたくさんかかったり、自分で国民年金を払っていたり、確定拠出年金をかけていたり、扶養している家族が多い場合はこの「所得」から差し引くことができます。
色々引いて所得が小さくなればなるほど税金はかかりにくくなりますね。
そうして、色々と差し引いて、最後に出た数字のことを「課税所得」といいます。
ここに所得税の税率を掛けます。
所得税の税率は5%~45%と決まっています。
何パーセントになるかは、↑上の「課税所得」の大きさによって決まっているのですね。
所得税は、確定申告期限(3/15)までに納税します。
◆住民税
住民税
納める相手:地方自治体(地方税)→自分の市区町村
納める期限:おおよそ6月から年に数回分割(自治体による)
計算のもと:課税所得に近い
納める金額:課税所得に対しおおよそ10%
住民税がかかる元は、所得税の「課税所得」に似ています。
厳密にいえば計算方法が少し違いますが、同じぐらいだと思っていて差し支えありません。
住民税は、税務署に確定申告したデータが自分の住んでいる市区町村に送られて、市区町村から納付書が送られてきます。
給料がある人は、給料にかかる住民税は給料から差し引かれる場合もあります。
◆個人事業税
個人事業税
納める相手:県税事務所・都税事務所
納める期限:8月/11月
計算のもと:売上ー経費ー290万円
(青色特別控除は使えない)
納める金額:業種により3~5%
所得税・住民税は給料からも発生しますが、この個人事業税は起業しているから発生する税金ですね。
聞いたことがないという人も多いのではないでしょうか?
計算方法がちょっと特殊です。
同じ税金の計算にもかかわらず青色申告の特別控除(10万・65万)を使うことができません。
その代りに事業主控除と呼ばれる「290万円」をひくことができます。
なんで290万円なんですか?と聞かれることがありますが・・・・わかりません(笑)決まりです。
業種によってかかったり・かからなかったりするものですが、何かを教える講師業などは「諸芸師匠業(しょげい ししょうぎょう)」と呼ばれるちょっと古臭い名称に分類されて、5%かかることがほとんどです。
自分がやろうとしている業種がどうなのかは、管轄の県税事務所などにお問い合わせくださいね。
じゃあ違う名称で書いちゃえばいいじゃない?
と思うかもしれませんが、「実際の業務の内容を見て判断します」とのことです。
◆国民健康保険税
国民健康保険税
納める相手:地方自治体(地方税)→自分の市区町村
納める期限:おおよそ6月から分割払い(自治体による)
計算のもと:課税所得に近い
納める金額:自治体によっていろいろ
いわゆる「国保(こくほ)」と呼ばれるものですね。
家族の誰かの扶養に入っているときはそちらの組合から保険証をもらいますが、扶養から外されてしまうと自分で国保に加入しなければいけません。
基本的には「社会保険 or 社会保険の扶養 or 国保」の3択です。
(国保には扶養という概念はありません)
え?国保って税金なの?と思うかもしれませんね、
これも実は自治体によって「税」と「料」と取り決めているんですね。
払う側としては税でも料でもあんまり関係はないですが、所得次第でどんどん金額が上がるというのと、自治体ごとに金額が全く違うのであらかじめ調べておきたいところです。
自治体のホームページに書いてあることが多いので「国民健康保険」のところを調べてみてください。
利益とは関係なく払うもの
◆償却資産税
償却資産税
納める相手:地方自治体(地方税)→自分の市区町村
納める期限:年4回程度の分割
計算のもと:事業で持っている資産の評価額
納める金額:1.4%
これまた聞いたことのない税金でしょうか?
固定資産税の親戚と思ってもらえればオッケーです。
事業として購入した資産がたくさんあると、かかる仕組みになっています。
すぐ使ってしまう消耗品と違って、形の残る「資産」のことです。
「資産」というのは、おおよそ一つ10万円以上のものを目安にしてもらえればいいですね。
それが積み重なって全部で150万円をこえると、かかるようになる税金です。
とはいえ、モノですからだんだん価値は下がってきます。
そういうものを織り込んで計算されますので、よほど設備投資のいるような事業でない限りはあまりお目にかかることはないかもしれません。
市町村によっては、開業届を出すとこの申告書を送ってくることもあります。
申告書が届いた場合でも、資産がない場合は「ない」と書いて出せばいいだけですので、来ても驚かないでくださいね。
◆消費税
消費税
納める相手:国(国税)→自分の管轄の税務署
納める期限:3/31
計算のもと:預かった消費税と払った消費税の差
納める金額:原則8%
消費税を払ったことがない、という人はいないかと思います。
でも「私、消費税は預かっていません」っていう人は、けっこう多くいるんですね。
でも実はその認識は間違っています。
消費税がかからない取引のほうが少ないのです。
お医者さんだったり、不動産業だったりする場合や、輸出入などになるとまた変わってくることもありますが、私のように何かを教えたり、何かを販売したりしての売り上げは基本的に「消費税がかかる」サービスです。
10800円なら800円がお金を払った人から預かっている消費税ですが、仮に10000円いただいているとしたら、そのうち741円の消費税を預かっているのです。
「消費税を納めていないから預かっていません」は違うのですね。
「預かっているけど納めなくていい人」に該当しているだけなのです。
消費税は単純なようで、ちょっと複雑。
利益ではなく、一年間の『売り上げ』が1000万円を超えると考えなければいけない税金です。
単価の高い商品を販売している場合や、早いペースで月商が上がっている場合は十分に気をつけましょう。
起業スタート時は細かいことはわからなくてもいい
見たことのない言葉、見たことのない計算方法に驚いたかもしれません。
難しそう!と思うかもしれませんが、スタート時にはそれほど細かく計算できる必要はありません。
「どんな税金がかかるのか」「かかる元」「かかる基準」がおおよそ分かっていれば十分です。
知っておいて欲しいのは、こういうことはすべてほかのだれでもない「自分」が支払うべきものだということです。
売上が上がれば支払うものも増えてきます。
そんな時に「知らなかった」では済まされません。
売上が増えれば、利益が上がれば責任も増えてきます。
前もって調べておくことを習慣にする。
ママであろうと女性であろうと納税をすることは事業を行うものの責任として自覚を持つ。
そして、事業の成長とともに知識も深めていくことを忘れないようにしたいですね。