大学生の働き控えを解消しようという意見も発端に、大きく話題になった「年収の壁」
さまざまな議論を経て、大きなルール変更がありました。
親の扶養に入りながらアルバイトをしている大学生やフリーターの方にとっては影響のあるルール変更です。
この記事を読むとわかること
- 税金上の扶養と社会保険上の扶養の違い
- 2025年税制改正による変更点
- 学生が扶養内で働ける年収の上限
- 扶養を外れた場合の影響
最近、特に首都圏では時給が上昇傾向にあり、大学生がバイト先で重要な戦力となっているケースも多いです。
ですが、親子でお金の話をする機会がないと、月々はそれほどでなくとも夏休みなどの長期休みにバイトを詰め込み、子どもが扶養を外れてしまう可能性もあります。
2025年の税制改正で大きく変更があった「学生の扶養」についてしっかり理解し、どこまで働くのがそれぞれにとって良いことなのか、親子で話し合えるようにしてください。
扶養には2種類ある!
そもそも「扶養」には、大きく分けて2つの種類があるのをご存じでしょうか?
- 税金上の扶養
- 社会保険上の扶養
それぞれで「扶養に入れるルール」が異なるため、分けて考える必要があります。
税金上の扶養
まずは、税金上の扶養について解説します。
子どもを養っている場合、親は「扶養控除」という制度を利用して税金を軽減できます 。
養っているというからには、扶養控除を受けるには子どもが「自立するだけの収入がない」ことが条件です。
子どもの年収がこれまでは103万円以下であれば、親は扶養控除を受けられました 。
①0歳~15歳・・・・0円(控除の対象外)
②16歳~18歳・・38万円(一般の扶養親族)
③19歳~22歳・・63万円(特定扶養親族)
④23歳以上・・・38万円(一般の扶養親族)
となっています。
※控除の額というのは、親の税金計算の元から差し引ける優遇金額のこと
これまでは子どもが103万円を1円でも超えてしまうと扶養控除の対象からはずれていました。
そうなると、親の税金が大幅に増えるため、103万円を超えないようにアルバイトなどを調整する「就業調整」が行われていました。
そのため、学生がさらに働けるようにすることも目的に、2025年から一部ルールが変わっています。
2025年改正でどう変わった?
2025年の税制改正で、扶養控除のルールが以下のように変更されました 。
ただし、改正になったのは「19歳~22歳までの特定扶養親族」のみです。
よく「大学生の扶養」と表現されますが、実際には「(年末時点で)19歳~22歳」が要件なので、必ずしも学生である必要はありません。
専門学校に通っていたり、フリーターなどでも対象です。
子どもの収入と、親の税金の控除額は下記のように変わりました。
(※図の青い部分が新設)
縦軸が親の税金の控除額、横軸の(かっこ書き)が子どもの給与収入です。
■123万円超~150万円:特定親族特別控除(63万円)が受けられる
■150万円超~188万円:段階的に税金の優遇が減る(3万円~61万円)
つまり、これまで103万円で無くなってしまっていたものが、150万円までは親の税金優遇が続き、188万円まではわずかながら控除が受けられるようになったのです 。
年収の集計期間と含むもの
税金上の扶養における年収は、1月~12月の1年間の収入(結果)で計算します 。
(原則、支払い月ベースで管理するので11月勤務分が12月に支払われるなら、11月勤務分まで)
バイト先が複数ある場合は、すべての収入を合算します。
交通費は含みませんが、手当やボーナス、インセンティブなどは含むので注意しましょう 。
150万円を超えたら親の税金はどうなる?
子どもの年収が150万円を超えると、親の税金が増えます 。
ただし、これまでの103万円を超えた時と比べると、増加額は少なくなりました。
どれくらい親の税金が増えるのかは親の税率によって異なります。
例えば親の所得税率が10%、住民税率が10%の場合、子どもが160万円稼ぐと親の年間の税金は約3万円弱増える計算です 。
親の税率の確認方法はこちらの記事を参考にどうぞ▼ iDeCoは節税だよ!生命保険も節税になるよ!なんて話はよく聞きます。そして「所得税の率と住民税の10%を足した額をかけると節税の金額がでるよ」なんて話もよくし ... 続きを見る
参考源泉徴収票からわかる!自分の所得税率の確認方法(パート・会社員編)
年末調整や確定申告で控除を受ける際、子どもの年間収入をしっかり把握しておきましょう 。
これまでと違い「103万円を超えているか・いないか」だけではなく、150万円を超えている場合は段階的に控除が減るため、正確な金額の把握が必要です。
特に時給などで働くアルバイトの場合、親の年末調整の締め切りぎりぎりまで子どもの収入が確定しないこともあります。
(年末調整に間に合わない場合、見込みと実際の金額が大きくずれてしまった場合は確定申告等で再度計算のし直しが必要です)
基準を超えているにもかかわらず、親が扶養控除の申告をしてしまうと、後から税金の不足分を支払う必要が出てくる場合があります 。
学生本人の税金はどうなる?
次に、学生本人にかかる税金について解説します。
バイトで得た収入には、所得税や住民税がかかります。
これが2025年の改正により基礎控除額が増えたため、年収160万円までは所得税がかかりません 。
ただし、住民税は、所得税とは別に計算します。
お住まいの地域によって異なりますが、住民税がかかり始める年収は一般的には110万円です 。
(地域によっては103万円からかかる場合もあるので、お住まいの市区町村に確認しましょう )
勤労学生控除で住民税を減らそう
ただし学生の場合、年収150万円までは「勤労学生控除」という優遇措置があります 。
勤労学生控除を使うと、住民税の対象となる金額を134万円までにできます。
特定扶養控除は「18歳~22歳」なら学生であることは要件ではありませんでしたが、勤労学生控除はその名の通り「学生」のみが使うことができる控除ですので、注意してください。(例えば19歳のフリーターなどは対象外)
申告はアルバイト先での年末調整で申告するか、確定申告で自分で申請しましょう 。
社会保険の扶養
次に、社会保険の扶養について解説します。
社会保険の扶養とは、収入が少ない(またはない子どもが)親の社会保険(健康保険)に一緒に加入する制度です。
親は扶養している子どもの分の保険料を払うことなく、子どもの保険証をもらうことができます。
(この社会保険の扶養については、2025年5月現在変更はありません)
いくらまで社会保険の扶養でいられる?
社会保険の扶養には、106万円と130万円の「年収の壁」があります 。
106万円の壁は学生には原則として関係がないため、注意すべきは130万円の壁です 。
この130万円という金額は、税金上の扶養と違い年間の収入(結果)ではなく「見込み年収」が130万円未満であることが条件です。
(実際には、親の加入している健康保険が判断します)
多くの企業では、月収が108,334円未満(130万円÷12ヶ月)であれば扶養内としています 。
この金額には、交通費も含まれることがほとんどなので注意しましょう 。 複数で働いている場合も収入は合算します。
社会保険の扶養を外れるとどうなる?
税金上の扶養を外れた場合と異なり、社会保険の扶養を外れても親に影響はありません 。
ただし、親の健康保険証は使えなくなるため、学生本人が国民健康保険に加入する必要があります 。
国民健康保険料は、住んでいる自治体や収入によって異なりますが、年収150万円程度の場合、年間15~16万円かかることもあります 。
130万円を少し超えたぐらいでは、手元に残せるお金が逆に減ってしまいかねません。
目的別の金額まとめ
最後に、大学生が扶養内で働く場合の年収の目安をまとめます 。
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■親の社会保険の扶養内でいたい場合:130万円(月収約10.8万円)まで
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■住民税がかからないようにしたい(学生のみ):134万円まで
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■親の税金を増やしたくない場合:150万円まで
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■自分に所得税がかからないようにしたい場合:160万円まで
(※)住民税の均等割も対象外の状態。大学無償化などの条件で非課税であることが大切なときは注意
扶養手当は要注意
親の会社によっては、扶養している家族がいる場合に「扶養手当」が支給されることが多いです。(国から支給される「児童手当」とは別物です)
支給の基準は会社によって異なるため事前に確認しておきましょう。123万円までのケースも多いです。(18歳までのこともあります)
最近は配偶者の扶養手当をなくす代わりに、子どもに係る手当を増やしているケースも増えてきているので、うっかり超えてしまうと親の収入が減ってしまいます。この基準についても気をつけましょう。
大学生がアルバイトをする理由はさまざまですが、税金や社会保険の仕組みは複雑です。
知らなかったでは済まされないこともあるので、親子でよく話し合って決めるようにしてくださいね。