ー この記事を書いた人 ー
ファイナンシャルプランナー 塚越菜々子

塚越 菜々子 「FPナナコの部屋」主宰

保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナー。日本FP協会認定CFP®。「働く女性のお金の不安を解消したい」思いで、主に共働き女性に公的制度や家計・投資などお金の話を伝えています。

実績・メディア

単身赴任手当は平均4.5万円!?「単身赴任」か「帯同」どちらかを決めるポイントとは

我が家の夫は、全国転勤の可能性のある仕事をしています。
今のところ転居を伴う辞令が出たことはありませんが、やはり異動の季節になるとドキドキしてしまいます。

経済的な問題ももちろんですが、私は「夫のそばで暮らしたい」という想いが強いからです。
ですが、現実問題「私の仕事」「子どもの教育」「祖父母との関係」などを考えると、一家で引っ越すことがいいことなのか考えてしまうこともしばしばあります。

いわゆる”転勤族”と呼ばれるご家族のママから家計の相談を受けることもありますが、「お金だけを優先しないでくださいね」とお伝えしています。

お金はあくまで、幸せに生きるための「ツール」
経済的合理性だけを追い求めて、家族の幸せを置いてけぼりにするのはあまりいいこととは思えません。

ナナコ
単身赴任か帯同か、どんな観点で検討すればいいか考えてみましょう

 

単身赴任になった場合の生活費はどれくらい?

転勤の可能性が浮上したときに、まず心配になるのは「ついていくか」「離れて暮らすか」ということではないでしょうか。いずれにしても『お金』の問題が頭をよぎります。

まずは、単身赴任でご主人が1人で暮らすことになった場合、生活費はどのくらいかかるでしょうか?

「総務省統計局 家計調査報告」における単身世帯の家計収支(※)によると、35歳~59歳で働いている一人暮らし(単身世帯)の生活費は20万円弱のようです。こちらは単身赴任者だけのデータではありません。

食料     5.1万円
住居     2.9万円
水道光熱費  1.1万円
日用被服   0.9万円
保健医療   0.6万円
交通・通信  3.3万円
教養娯楽   2.1万円
交際費    1.2万円
その他    2.5万円
(合計   19.7万円)

総務省統計局 家計調査 2019年平均(2020年2月発表)
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2.html

単身赴任で受け取れる手当は?

少し古いデータですが平成27年の「厚生労働省 就労条件総合調査」(※)によると、単身赴任手当・別居手当などは約4.6万円程度となっています。100人以下の中小企業では約3.7万円です。

しかし単身赴任をすることに対する会社からの手当てというのは、それぞれの会社によって大きく変わります。
家賃は会社が負担し、自分は数千円だけを給与から天引きで支払ったり、住居手当として給付されたりすることもありますので、会社の規定をよく調べたいところです。

住居手当が出るとしても、残した家族が住む家の方の家賃で補助を受けた方がいいときは赴任先の家賃補助は受けられないこともあります。

また、給与に加算して手当てがつく場合は、年収が上がり税金や保険料の負担が上がることもあります。給付された額すべてが、単身赴任の生活費に充てられるわけではない可能性も考えておきましょう。

(※)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/15/index.html

地域や生活スタイルによっても大きく違う

初めに紹介した単身世帯の費用は単身赴任に限ったデータではありません。未婚の一人暮らしも入っているので支出の仕方には違いがあるかもしれません。
また、住居についても社宅などに住むことができれば負担は少ないこともあります。

単身赴任と言っても、例えばスマホ代などは二重にかかるものではありませんから、支出が20万円増えることはないはずです。
上記の支出はあくまで「一人暮らしの」例であることに注意してください。

自炊ができるのなら食費は押さえられるかもしれないし、逆に今までほとんど妻が食事の世話をしていた時などは、赴任先でも外食が増えて食費もかさむかもしれません。

自宅からの距離によっては、帰省の回数や交通費も違ってきます。定期的に連絡が取れればいいという家庭もあれば、やはり顔を見て話したい、コミュニケーションを取りたいという家庭もあると思います。
データはあくまで参考程度で、もし我が家が単身赴任をしたら実際にどんな暮らし方になるのかをシミュレーションしてみましょう。

 

どんなポイントで考えたらいい?

単身赴任するかそれとも帯同するか大きな問題ですが、どんなことをポイントに考えればいいでしょうか?

赴任期間はどのくらい?

転勤族で「おおよそ2年ごと」など目安が分かっていたり、同じ場所にいるのは3年以内などと決まっているときは計画が立てやすいかもしれません。
本拠地があって、地方へ2年赴任後はまた戻るというケースと、全国どこに行くのかわからず期間もまちまちというのでは計画が変わってきます。

自宅からの距離はどれくらい?

自宅からの距離も大事なポイントです。
3連休ぐらいあれば十分に返ってこれる距離なのか、あるいは飛行機や電車を乗り継いでの距離なのかによっても違います。
体調不良や、万が一の時にすぐに駆け付けることができるか、会いたくなったら会いに行けるかも家族としては気になるところですね。

今の住まいはどうする?

賃貸で暮らしているときは帯同して一家で引っ越してしまうこともできますが、これが持ち家だと話は変わってきます。

(単身赴任)持ち家を購入したから帯同せずそのまま住み続ける
(帯同)売却して現金化する
(帯同)赴任中は賃貸に出す

もちろん空き家にして帯同することもできますが、その場合は管理などに注意を払ったうえ、ローンや固定資産税の費用などもよく計画が必要です。

子どもの学校・教育環境は?

ママが悩む大きな理由は自分だけの問題ではないからです。
よほど乳幼児や一人暮らしできる年齢でない限り、子供は引越しに伴い転校することになります。
子供の人間関係や学習面、あるいは受験などの進路にも影響が出てくるかもしれません。

中学受験が盛んな地域、学校の選択肢が多い地域、ほぼ全員が同じ学校に持ち上がる地域…地域によっては教育にも差がありますので、転勤先で親が望む教育を受けさせることができるかもチェックが必要でしょう。

妻の仕事は?

共働きの場合、帯同するのが難しいのは妻の仕事の問題もあります。
全国どこでも支店があったり、リモートで働ける環境になっている人ばかりではありません。

頻繁な転勤で妻のキャリアが作れないという問題があるように、妻自身のキャリアや収入についても見通しを立てる必要があるでしょう。
短い赴任期間のために妻が仕事をやめることでその先の生涯収入が大きく減るとしたら、ライフプランが大きく変わる可能背が高いです。

育児の手助け・祖父母との距離などは?

育児は夫婦二人でしていることも多いかもしれませんが、共働きなどでは祖父母の力を借りていることも少なくありません。
子どもがおじいちゃん・おばあちゃんとの親交も大事にしているときは離れてついていくことへの精神的負担も考慮が必要かもしれません。

いくつかのパターンで想像してみる

まだ転勤が決まっているわけではないけれど、転勤の可能性があるから計画が立てられないという相談もしばしばいただきます。
こればかりはどれだけ考えたところで先のことが分かるはずはありません。だからといって、そのままにしておいて無計画にしたままでは後から取り返すのが大変になりかねません。

そんな時は、優先順位を意識しながらいくつかのパターンを想像してみることがおすすめです。

子どもが〇年生までは基本的に帯同するがそれ以降は単身赴任する。このように決めているご家庭も多いですね。兄弟がいる場合は何番目の子を基準にするかも考えておく必要があるでしょう。

定年まで〇年以内だったら単身赴任してもらう、このようなパターンで計画しているご家庭もありました。

お金だけ・感情だけで判断しない

転勤が期間限定で、また自宅から通える勤務地に戻れるのか、どれくらいの期間で戻れるのか、それとも転々としていくのか……。これも会社や立場によっていろいろです。

別々に暮らすことになれば、一緒に暮らしているときに比べてお金がかかるケースがほとんどです。ですが、共働きの場合などは帯同することで妻が離職し収入が激減。一家で引っ越すことで引っ越し代がかさむということもあるでしょう。

持ち家があるのか、子どもの年齢は、子どもの希望は、妻の就労状況は、今後の転勤の予定は、期間は……。たくさんの複合的な条件を考えて決める必要があります。

もちろん将来の貯蓄のことを考えたら、より支出が少ない方法を選ぶのがいいのかもしれません。ですが、経済的な合理性だけを追い求めて決定してしまうと、どこかで無理が生じてしまうはずです。

家族はやっぱり一緒にいるべき。子どもの教育を考えたら単身赴任で。などいろいろな考えがあると思います。
どれが正解でどれが間違っている、というものではありません。

お金は「幸せに暮らす」ためのツール。
自分や家族が幸せな暮らしをすることを、ずっと我慢してお金を貯めるのでは本末転倒です。

どちらをとっても、予期せぬことは起こるものです。不安や悩みも尽きることはないでしょう。
ですがそんなとき「あのときたくさん話し合って出した結論だった」と思えるかどうかは大きいはずです。

『選んだ道を正解にしていく』

単身赴任か帯同かのモノサシを「お金」だけにせず、今できるベストを選び取ったと思えるところまで、家族で話し合うことができるといいと思います。

働き方を考えるきっかけにも

会社の転勤命令は原則として拒否することはできないと言われています。(地域限定勤務の契約をしている場合を除く)
転勤が難しい場合は会社に配慮を求める交渉はできますが、それが受け入れられるとも限らず、配置転換や退職勧奨になってしまうことも多いようです。

会社で雇われて働く以上、すべてを自分の思い通りにするのは難しいものですし、転勤によって新しい人間関係が作れたりキャリアアップのチャンスになることもあるかもしれません。

ただ、入社時とは自分が優先するものが変わってくることもあるでしょう。納得できない転勤を提示されたら、働き方を考える時期かもしれませんね。

 

暮らしとお金を考える『ファイナンシャルフィールド』にも掲載されました。

掲載された内容はこちらからご覧ください。

 

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