ー この記事を書いた人 ー
ファイナンシャルプランナー 塚越菜々子

塚越 菜々子 「FPナナコの部屋」主宰

保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナー。日本FP協会認定CFP®。「働く女性のお金の不安を解消したい」思いで、主に共働き女性に公的制度や家計・投資などお金の話を伝えています。

扶養に入る・外れる

130万円の壁「連続2年を超えても扶養でいられる」猶予の誤解

2024年10月から106万円の壁が再度拡大して再び注目されています。
とはいえ、106万円の壁に該当する人は一部の人。まだまだ130万円の「扶養」に関する質問も多くいただきます。

そこで今回は、年収の壁支援強化パッケージのなかでも、特に話題となった「2年間は年収が130万円を超えても扶養でいられる」という話について、誤解も含めて詳しく解説していきます。

注意ポイント

年収の壁支援強化パッケージはパートで働く人の就業調整(働く時間を短くして扶養内にしよう)を防ぐための国の施策です。

106万円や130万円など一定の年収を超えると税金や社会保険の負担により、手取りが扶養内でいる時に比べて減ってしまうことで、働き控えが発生しないように当面の間実施されるものです。

106万円の壁対策と130万円の壁対策がありますが、106万円の壁対策は「パートを雇う会社」に対して行われるものなので、パートの人自身が利用するかどうかを決めることはできません。

Youtubeチャンネルでは、扶養に関する動画を多数配信しているので、気になる方は過去のコンテンツをご覧ください。
こちらのページでも動画一覧をまとめています。

参考【無料動画で学ぶ】年収の壁・扶養に関する悩み別の情報まとめ

結婚した、仕事を辞めた、働きだした・・・ 女性のライフステージでよく発生する「扶養される」という現象。 実は一口に「扶養」といっても、その制度は大変ややこしく、 ...

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また、新たに発売された『扶養の壁』に関する本も参考にしていただければと思います。

この記事の内容を動画で見る時はこちら▼

 

年収の壁支援強化パッケージとは?

年収の壁強化パッケージが公表され「2年間130万円を超えて稼いでも扶養でいられる」という話題がありました。
これは実はけっこう誤解されています。

扶養の壁には「社会保険」と「税金」に関する年収の壁があります。
まず、社会保険に関する年収の壁は106万円と130万円です。

106万円の壁は自分がパート先で社会保険に加入する基準額。
これは比較的シンプルで、自分の働き方(週20時間以上・月8.8万円以上)やパート先の条件(社員51人以上の規模)によって対象になるか異なります。

一方、130万円の壁は夫の社会保険の扶養内にとどまれるかどうかを判断する基準です。
この壁を超えると、扶養から外れ、自分で国民健康保険や国民年金の保険料を全額負担する必要が出てきます。
ここで問題になるのは、せっかく働く時間を増やしても、扶養を外れることで手元に残るお金が減るケースがあることです。

こうした背景から、働けるにも関わらず、扶養内にとどまるために労働時間を抑える「就業調整」が起きています。
実際にシフトを調整したり、月の収入の上限を気にして働いている人は多いですし、この130万円に交通費が入るかどうか、ダブルワークならどうかというご質問も多くいただくのが何よりの証拠です。

ナナコ
とにかく人手不足! 会社側はもっと働いてほしいけれど、手取りが減るとわかっていて働けとまでは言えませんよね・・・

年収の壁(扶養の制度)が社会問題になっていますが、だからといってこれを一気に撤廃することも現実的ではありません。

130万円の壁支援強化パッケージの内容

こうした状況を踏まえて、政府が打ち出したのが「年収の壁支援強化パッケージ」です。

106万円の壁への対策は会社が利用するかを選ぶものでパート側が使うかどうかを選択できるものではないため、この記事では「130万円の壁に関する対策」について説明します。

このパッケージの特徴は、一時的に収入が130万円を超えても扶養でいられる仕組みがあることです。
例えば、パートやアルバイトで時的に残業が増えて収入が増加した場合、ート先がその旨を証明し、③夫の健康保険が認めれば、130万円を超えていても扶養内でいられるというものです。

参考

パート先に記入してもらう事業主の証明書はこちら▼
厚生労働省:被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書(PDF) 

ただし、扶養の認定を行う組合(夫の健康保険組合)などが既定の様式を用意していることもありますので、事前に確認してください。

2年間稼ぎ放題?の誤解

このルールが発表された際、一部では「2年間稼ぎ放題」「130万円の壁が崩壊する」といった誤解を招く情報が流れました。
よくルールを確認せずに働くと扶養から外されてしまいかねません。

例えば、厚生労働省が出した例を見てみましょう。

①夫の会社で毎年10月に妻が扶養でいられるかのチェックを行う。
いつ扶養の認定を行うかは会社(健康保険)によって違う。年末調整のときに確認することも。提出書類もそれぞれ。
②認定時点で妻の見込み年収が120万円(月の交通費込みの収入が10万以下程度)であれば扶養内と認定
③その後、妻のパート先で一時的に収入が増え月に12~3万円働くことに。このままだと年収が140万円になってしまう。

このような状況では、パート先が「一時的に人手不足で収入が増えた」という証明書を作り、(夫の)健康保険に提出することで、130万円を超えた部分を除外してもらうことが可能になるケースもあります。
ただし、これはあくまで一時的なものです。
恒常的に(そもそもの契約内容から見ても)130万円を超える働き方をしている場合や、ダブルワークによって超えた場合は、このルールは適用されません。

また、このルールが適用されるのは、パート先が証明を出し、夫の健康保険組合がそれを認めた場合に限られます。
つまり、130万円を超えたからといって自動的に扶養内でいられるわけではありません。

扶養の認定は通常年に1回行われます。
そのため、「2年間稼ぎ放題」という話も、実際には連続2回の扶養認定が行われるタイミングまでを指しています。
頻繁に扶養の認定を行う企業は少ないため2年間という言い方がされていますが、丸々2年間稼ぎ放題なのだと勘違いしないように気をつけましょう。

この年収の壁支援強化パッケージは当面の間続く予定です。
130万円の壁は超えて扶養を外れても、負担が増え社会保障は増えないため大きな壁となっているからです。
ただし、これも今後106万円の壁が拡大(短時間労働者の社会保険の適用拡大)していくことで影響が出てくる可能性があります。

扶養内で働きたい方は、正確な情報を元にしっかり確認し不確かな情報に惑わされないようにしましょう。
安易に飛びついて誤った選択をしてしまうと、自分が一番損をしてしまいます。

今の手取りだけではなく長い目で見たときの収入や、万が一の時の社会保障についても考えながらより良い働きかたを選択していただければと思います。

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