年末年始や年度替わりになると、忘年会・新年会、歓迎会・送迎会等で頻繁に飲み会が多い。親族づきあいや会社の付き合いが濃く、年に何度も香典やご祝儀が発生して家計管理が大変。そんなご相談をよく受けます。
季節の変わり目やイベントのたびならまだしも、管理職や営業職、経営者などで常日頃から多い場合はもっと負担を感じますね。
飲食代そのものも負担だし、拘束される時間が深夜に及んでタクシーで帰宅するなども、頻繁だと家計へ与える影響は想像以上に大きいものです。
都市部ではそう多くないかもしれませんが、郊外などでは自治会の役や消防団などでもそういった「交際」は発生します。ほとんど収入源としては機能しないにもかかわらず、宴会や食事を含む集まりが頻繁にあったり、会ったこともない人の香典やご祝儀・出産祝いなどが頻繁に徴収されたりもあるようです。
万人に当てはまる解決策はありませんが、「話し合いをする」「金額の枠を決める」が基本。
そのために、妻としてどう考え・関わっていったらいいかを考えていきましょう。
夫の飲み会が許せない「感情論」とは切り離す
まず初めにはっきりさせておきたいのは、夫の飲み会等に対して抱く気持ちを「お金の問題なのか」「お金の問題ではないのか」を混同しないということです。
夫の飲み会が困る!とおっしゃる奥様によく話を聞くと、最終的にはお金のことで困っているわけではなく、自分は夜出かけられない不公平感・家庭のことをしてくれない不満・浮気をしているのではないかという疑念・もっと子供との時間を大事にしてほしいという要求、そんなこととごちゃ混ぜになっていることも多いです。
それを「お金の問題」と同じまな板の上にのせてはいけません。
感情的にお金の話をされることを多くの男性は嫌がります。
感情的になればなるほど解決からは遠ざかっていきますから、まずは自分が落ち着いて向き合いましょう。
「仕事に必要」を全て認めなくてもいい
世の中には「仕事上の付き合いだから減らすなんて持ってのほか」「大人の男には付き合いがある」「減らすと出世に障りがある」という人もいるでしょう。
その点については私も一定の理解をしています。
まさか贈収賄とまでは言わずとも、人と人が一緒に仕事をしている以上、”飲みニケーション”を代表とする、必ずしも合理的かどうかはわからないことが仕事に前向きに働くことは大いにあり得るからです。
その上であえてこう言いたいと思います。
「家計を圧迫するほどの交際をしないと成り立たない仕事なんてそもそもおかしい」「それを強要したらパワハラです」
いつか出世したら給料に上乗せして回収できる、というのは幻想です。
「仕事に必要だから」という一言でその交際費のすべてを認めなくてもいいのです。
特に飲み会が好きな場合は「仕事だから」という言葉ですべてを丸めようとしがち。
”本当に”飲まないと仕事にならないのだとしたら、そもそもそんな会社は先がないでしょう。
そして”本当に”家計に問題があるのだとしたら、そんな会社では”ない”ところで働いてもらわないといけません。
夫の会社のことは妻にはわかりません。
妻はまず”本当に”家計に問題があるかどうかを明らかにしておきましょう。
急がば回れで準備する
夫の飲み会が家計として妥当であるかどうかを、感情的ではなく示すためには様々なデータが必要です。
責めるわけではなく事実確認を行いましょう。
遠回りに感じるかもしれませんが、結果として「押し付けない」「夫が自ら判断する」「不満を残さない」ところにもっていくためには避けて通れません。
面倒ではありますが、様々なことが付属物として見えてくるので、腹を決めて・腰を据えて取り組むことをお勧めします。
飲み会・交際の額が妥当かどうかを出す手順
そもそも「使いすぎかどうか」をどう判断していますか?
そこが「なんとなく」「多い気がする」だとしたら、説得力がありません。
また、「一般的にはこれくらい・・・」というのも、行動を変えるには弱い動機付けです。
手取りの1割がお小遣い、交際費もその程度で、などの目安はわかりやすいですが、肝心なのは「本人が気づくこと」
妻はその判断のお膳立てに全力を尽くしましょう。
手順1:家計の収入をチェックする
夫の交際費がどのくらいの割合を占めているのかを判断するためには、全体の収入の確認が欠かせません。
年収1000万円で飲み会が年50万円だったら5%ですが、年収500万円なら10%。ワケが違いますね。
使い”すぎ”と言いたいのなら、そのラインを何かの数字をもとに線引きできないといけません。
手順2:いくら貯金が必要かチェックする
次は支出の確認・・・ではありません。
必要な貯金ができていれば支出の内容など本来どうでもいいのです。
貯まっているのなら、そもそも「使いすぎ」という考え方が発生しません。
いくら貯金をしないといけないのかの確認が先です。
教育費をはじめ、これから住宅を買うなら頭金、すでに買っているならリフォーム費用や必要なら繰り上げ返済の余力、車を持つなら買い替え代金・家電の買い替えなどの余剰金・そして老後費用などです。
これらのおおよそのゴールを決め、いつまでに貯めるかが決まれば、一年で必要な貯金額が出てきます。まずはそれができているかを確認。
飲み会が「感覚的に多い」としても、十分に貯金できているのなら問題ないでしょう。
「必要な貯金額がわからない」のだとしたら、夫の飲み会・交際費に言及する前にそちらを計画することが先です。
「目的はないがお金は貯めたい。そのために飲み会を減らせ」はあまりにも説得力がないもの。
そう考えるとまだ自分側でできることがたくさんありますね。
必要な貯金額がどうしてもわからない場合は、子育て世帯ならまず「収入の15%」をイメージしてください。
あまりにもざっくりした数字ですが、家計相談の現場を見ている限り(すでに山ほど貯金がある場合を除いて)この程度は最低でも必要になることが多いです。
手順3:使える額から固定費を差し引く
手取り年収から、手順2の貯金額を取り除いたものが使えるお金です。出ていくお金には色々な種類がありますが、管理不能の支出、いわゆる「固定費」をまず”無いもの”とみなさなければいけません。
そもそもどんなお金が出ているかもわからない場合、飲み会費にメスを入れるより先に手を付けるべきことがありますね。
飲み会の費用にかかわらず固定費の削減は貯金額の増加や、使えるお金の増加につながりますので、ぜひ妥当かどうかは一度見直ししてみましょう。
手順4:残ったお金で飲み会にはどれくらい使うか
さあようやくここにきて飲み会の費用が妥当かどうかを判断します。
使えるお金がどれくらい残ったでしょうか?
もちろんここでいう使えるお金は、すべて自由に使えるお金でははありません。
まだ変動費が残っています。食費や日用品・被服費・交通費など、固定ではないけれど必要なお金もあります。家計簿をつけるまではしなくとも、レシートを取っておけばおおよその金額の把握は可能ですね。
入ってくるお金はある程度は決まっています。
お金は使えばなくなります。
つまり飲み会・交際費にお金を使えば、ほかに使えるお金は減りますね。
これは感情でも何でもなく、事実です。
その上で、どのくらいの額を飲み会・交際費に使っていいか。
それを使うことでほかにできなくなることは何かが見えてきます。
もちろんこれをする場合には同様に「妻自身の支出」も明らかにする必要があります。
妻には小遣いがないからと、家計費に紛れ込んだ「妻費」の浪費は、夫の交際費がかさむのと同じかそれ以上に貯まらない家計の原因になっていることがありますよ。
ここまで来て、ようやくご主人と話し合いの段階に行きましょう。
ポイントは夫に判断してもらうこと
感情論を挟まずに数字で見せることで、ある意味での逃げ場はなくなります。
責める必要も追い詰める必要もありません。
言葉だけでどうにかしようとすると、夫が口達者の場合にはなんとなくうやむやにされてしまうことはありますが、一つ一つを感情論ではない事実として伝えることで、お互いに建設的な話し合いをすることができます。
減らす項目を妻が一方的に決めつけないこと。
「お小遣いを減らしてそこに当てる」「お小遣いに含むことにする」など勝手に決めつけては反発を生むだけです。
あくまで夫が自ら決めるために働きかけましょう。
”本当に家計のお金が困っている”のだとしたら、その支出を続けることで夫自身の未来にどんな影響が出るのかを伝え、自己責任で選び取ってもらいましょう。
夫にも影響が出る費目を減らすこと
使えるお金が減ったからと言って、妻や子供だけが一方的に我慢をするというのはあまり良い解決方法ではありません。もちろん妻の支出や子供の支出に手を付ける方が合理的なこともありますので、全体の中で判断してください。
ここまで出したうえで「お前がもっと食費を削れ」だったり「教育費はそんなに出さなくていい」「そうは言っても何とかなるだろう」なのだとしたら、これはもう交際費云々の話ではありませんね。
情報共有が足りないのか、はたまた妻がもっと働くという選択肢を先にとってほしいと思っているのかもしれません。まずは日常のコミュニケーションをしっかりと取り、お金のことについて話し合える土台作りをしていきましょう。
それでも話にならない場合、そういう相手とこの先も一緒に生きていくかどうか、そこから改めて考えだすきっかけになるはずです。
どうしても仕事の経費だというのなら
冒頭で「交際しないと成り立たない仕事などおかしい」と正論のようなことを書かせてもらいましたが、そんなことばかりで解決できないことは重々承知しています。
机の上の正論を振りかざしては、家計改善のお手伝いにはなりませんね。
どうしても仕事をするうえでその支出が避けられないのだとしたら、それは「経費なのだ」と考え方を変えてください。つまり、収入とみなさないということです。
例えば手取りが30万円で、どうしても減らすことのできない交際費が3万円なのだとしたら、手取りを30万円と考えるのをやめましょう。30万円を得るために3万円必要だと受け入れたわけですから、『収入が減って手取りは27万円の家計になった』と考えるのです。
そうなれば、お小遣いも住居費も子供の教育に掛けるお金も『身の丈』はもっと小さくなります。
30万円の手取りの暮らし方ではなく27万円の手取りの暮らし方にします。
きっとできなくなることもあるでしょう。子供の進学や習い事、旅行などのゆとり費も小さくせざるを得ないかもしれませんね。
でも仕方ない。収入が少なくなったんですから。
その上で、家計としてどんな選択をするかを考えましょう。
人事を尽くして天命を待つ
最後に、ちょっと大げさではありますが「人事を尽くして天命を待つ」と書かせていただきます。
夫の交際費から、えらく大げさな言葉になりましたが、夫の交際費について悩む奥様には必ずこう伝えます。
「人を変えようとしてはいけない。まず自分ができることをしましょう」
それが、感情と事実を切り離すことであり、家計の全体を把握することです。これに夫は関係ないことがほとんどです。
そして最後は「そんな夫との未来をどうしたいか」という自分の覚悟が問われます。
さすがに「天明」は大げさですが(笑)肚の決まった妻の行動は夫を変えていきます。
どこまで家計で出す?の答えを”夫婦で”見つけていけることができる、賢い妻でありたいですね(^^)