新型コロナウイルス感染症の影響でサービス提供者、特に飲食店は大きな影響が出ていることも多いかと思います。
せっかく軌道に乗ったと思った夫のお店の売り上げがほぼ0。
行政などの支援策を使って何とか廃業は免れているけれど・・・
というお話を伺いました。
今回は、新型コロナウイルスの影響で夫の収入が激減!会社員の妻の扶養に入れることはできないか?というご質問にお答えいたします。
なお、夫の経営するお店が法人の場合はそもそも社会保険に加入しているはずなので、扶養には入れませんのでご注意ください。
結論:健康保険組合の判断次第ですが・・・
先に結論から申し上げると「おそらく難しい」と言わざるを得ない状況です。
ただし最終的な判断は健康保険組合が行いますので、まず確認してみるというアクションは大事。黙っていて有利な方法を教えてくれるということはありませんので、自分で情報収集していきましょう。
難しいだろうと考えられる原因と、他に対策できないかを考えていきます。
健康保険の扶養(=被扶養者)認定について
扶養に入れる基準も各健康保険組合が定めていますが、大まかな基準は似通っています。
多くの健康保険がこのような基準となっています。
収入というのは税金の計算をするときの「所得」とは違い、入ってきたもの全てというイメージが分かりやすいかもしれません。
会社員なら、給与・賞与・交通費・出産手当金・失業給付などこういったものも「収入」とカウントされます。
これが自営業の場合、本来の収入は売上になるところですが、収入の性質が会社員の給与とは違うため「直接的な経費は引いてよい」と定められてる組合が多いです。
どこまでを「直接的な経費」と認めるかは組合によってかなりばらつきがありますのでしっかりと確認しましょう。
要は、確定申告書の所得(いわゆる利益)の部分とは一致していないことに注意が必要です。
ちなみに、とある健康保険組合では、直接的経費として認められるのは「仕入」と一部の外注費(※審査アリ)だけでした。交通費も通信費も支払う給料も、保険料も広告宣伝費も消耗品費も認められていません。
自営業は原則扶養に入れることを認めないという組合もあります。
協会けんぽの健康保険はこの基準よりはもっと緩めで、逆に認められないのが「減価償却費」「貸倒引当金」「青色申告特別控除」などで、その他は認められることも多いようです。
一時的な減収で扶養に入ることを認めるか
問題は、一時的に減収しているから扶養に入れるのか、ということです。
給与収入の時でも「向こう一年間」でどうかを見るために、会社を辞めて収入が0になったときは「離職票」社員→パートに変えたときは「雇用契約書や直近の給与明細」の提出が求められることが多いです。
そもそも自営業の場合は、売上が一定でこの先も増減しないことを推測することは困難です。だからこそ扶養の認定も「確定申告書を出した」実績で判別されることがほとんどです。(逆にどこかひと月の売上だけで判断されると困ることも)
そのため、一時的な経営悪化はこの先も収入がなくなる(扶養するに値する)と証明することができません。
明らかに「廃業」するなどして、この先営業をしないことが明確な時は廃業に関する届け出を出すことで認められる可能性が高いです。
今回、コロナ禍において収入は0に等しくなったからと言って、健康保険側ではこの先も0かどうかを判断することはできません。
このまま相当期間売り上げが激減し、確定申告書を提出する段階において基準を満たせば、その時点からの扶養はあり得るかもしれません。
以上の点から、自営業の売り上げが激変ししても健康保険の扶養に入ることは厳しいと思われます。
扶養に入るメリットを別の支援策で
売上が0に近いような日が続くこと、大変に不安な日々を過ごされていると思います。
扶養に入れることができれば少し支出を減らすことができるのではと考えらえるのももっともです。
扶養に入れれば「健康保険と年金」の保険料を払わずに済むメリットがありますね。
ただ、残念ながら今の状態ですぐに扶養に入るのは難しそうなことは前述のとおりです。
その他の方法で負担を減らすことができないか考えてみましょう。
国民健康保険料の減免
コロナの影響によって減収した場合、健康保険の扶養の基準の緩和はほとんどありませんが、自営業の方が払う国民健康保険料に関しては支援策が出ています。
売上の減少具合や前年所得などの基準があるため、お住まいの市役所のウェブサイトなどをみて「国民健康保険」について確認してみてください。
こちらは神奈川県横浜市の物です。
横浜市の場合は
2019年の合計所得が1000万円以下
2019年の事業以外の所得が400万円以下
すべてに該当すると減免の対象になります。
国民年金の減免・猶予
国民年金もコロナによる減収を理由として減免・猶予の申請を受け付けています。
免除となると難しい可能性はありますが、猶予は比較的条件が緩いため著しい減収の時は申請できる可能性が高いです。
基準に満たなくても相談を!
基準に満たないということは、ある程度の収入がある(あった)はずですから、本来なら支払う能力があると判断されていることになります。
とはいえ、理屈上はたとえそうであったとしても様々な事情で支払いが難しい事もあるかもしれません。そんな時は免除や猶予基準に満たないとしても必ず相談をし、未納・放置することの無いようにしてください。
分割して少しずつ納付するなどで「未納にしない」ようにする相談に乗ってもらえることがほとんどです。
これは余談ですが・・・
健康保険組合は「夫が妻の扶養に入る」ことに対して、「妻が夫の扶養に入る」ことより厳しくみられることが多いように感じています。扶養の条件に男女の差はないはずなのに、実際の相談の現場でそういった不合理な取り扱いをしばしば目にします。
「これが妻だったら何も言わずに扶養には入れたよね」と思うことも多いのが実情。
なんとも言えない憤りを感じていますが、このような男女差別のようなことはなかなかなくなりませんね。男の方が稼ぎが多くて当たり前、という社会の認識も改めていかなければいけない時代だな、と感じています。
新型コロナウイルス感染症の先行きはまだわかりませんが、時間とともに少しずつwithコロナでの社会生活は動き出しています。
個人的な実感ですが「本当に必要とされているお店」は人が戻ってきているのではないでしょうか。
使える支援策を使って何とかこの難局を乗り越え、そして今度はこの経験を生かして次の「万が一」(ないことを願いますが)の対策ができるといいですね。