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ファイナンシャルプランナー 塚越菜々子

塚越 菜々子 「FPナナコの部屋」主宰

保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナー。日本FP協会認定CFP®。「働く女性のお金の不安を解消したい」思いで、主に共働き女性に公的制度や家計・投資などお金の話を伝えています。

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扶養内で開業届を出すメリットとデメリット

開業届とは、収入を「事業所得」で計算するという届け出です。
▼事業所得・開業届が何なのか知っておかないとこの後話が分かりにくいので先にこちらの記事をお読みくださいね。

ママ美
よくわからないけど開業届出しちゃって平気なの?誰でも出さないといけないの?
ナナコ
メリットもデメリットもあります。自分にはどちらがいいのか知って・選びましょう!

ママが自分のサービスを提供してお金をいただくことになったときには、すぐに開業届を出した方がいいのでしょうか?
開業届のメリット・デメリットは色々とありますが、この記事では特に「扶養内の方」が気を付けるべき開業届のことをお話します。

 

開業届を出すメリットは?

まず、開業届を出すメリットについて確認しましょう。
メリットについては、実はママであっても扶養内であってもあまり変わりはありません。扶養内だから出してはいけないものでもありませんし、誰でも出さないといけないわけではありません。

青色申告できるようになる

開業届を出して「事業所得」にしないと、青色申告をすることはできません。

青色申告とは簡単に言うと「もうけの計算の時に税金を有利に計算できる制度」「お金を支出せず経費を55万円増やせる制度」です。
ですから、青色申告のメリットがそのまま開業届を出すメリットになりますね。

節税効果が高いから売り上げが増えたら青色申告に変えればいいと思っている人も多いですが、実は赤字の時にこそ有利に使えるものもあるので、青色申告についても確認したうえで開業届のことを考えましょう。

 

個人事業主として認められる

開業届を出さないまま仕事をすると雑所得となります。雑所得はあくまで「その他の収入」ですから。一般には「仕事」とは認められません。

開業届を出すことで、事業主である証明になります。
保育園や学童の就労証明を自身の事業で出すことができるようになりますね。
ただし、自営業の場合は地域の民生委員さんの確認印が必要になることなどもありますので、あらかじめ保育園の申し込み基準をしっかりと確認しておきましょう。

それに付随して、開業していないと申し込むことのできない「小規模企業共済」をはじめとする制度を使うことができるようになります。
(小規模企業共済は副業での起業(給与がある状態)だと申し込めないこともあります)

 

屋号付きの通帳を作ることができる

屋号というのは、”事業所得のおサイフの名前”です。つけなくても構いません。
ですが、開業届に屋号を書いて届け出ていると、それをもとに事業用の通帳に屋号をつけて口座開設できるようになります。

すべての銀行で屋号付きの通帳が作れるわけではありません。取引を行いたい銀行で確認をしましょう。

また、屋号付きで作ってしまうと、事業内容が変わったときなどに変更しにくい、お客様が振り込むとき入力間違いが起こりやすいなどのデメリットもありますので、屋号付き通帳の検討は慎重に。

個人事業主という自覚・覚悟ができる

開業届というのは、起業・事業を興す届け出ですから、趣味やボランティアを超えて「仕事として」行っていくという大前提で届け出を出します。

出すことで個人事業主の覚悟が生まれるというのも、メリットの一つかもしれません。
初めての確定申告を出すまでは、開業届が個人事業主という証明になりますので、税務署に提出したという証拠となる「収受印」をもらい、しっかりと手元に控えを取っておきたいですね。届け出関係は郵送や電子申告で提出が可能です。

 

赤字の場合ほかの所得と相殺することができる

色々な種類の所得(もらったお金の種類)がある場合は合算するのが大原則です。

仕事を始めたばかりのときは収入より支出の方が多く赤字になることもあります。
その場合「雑所得」だと赤字=もうけは出なった=所得0というのが一番小さい数字ですが、「事業所得」の場合は赤字=所得マイナスにすることができます。
ほかに給料などをもらっている場合は、そちらと相殺して税金が少なくて住む可能性もあります。

ただし、給料がある場合は特に「副業」扱いとして事業所得として認められない場合もありますので注意してください。

 

開業届を出すメリットは、何といっても青色申告できることです。

ですので、開業届と青色申告は基本的にセットで考えるべきだと思っています。
開業届を出したはいいけれど青色申告の届出書を出し忘れて青色申告はできなかった、とならないようにしっかり気を付けたいところです。

開業届

 

ナナコ
ですが、ちょっと待ってください。
開業届を何も考えずに出してしまうのは危険です。
デメリットもありますので、それをきちんと理解しておきましょう。

 

開業届を出すデメリットは?

では、開業届のデメリットとはどんなものがあるでしょうか?

 

失業保険の給付の対象から外れることも

雇用保険の基本手当=いわゆる失業保険は、「働ける状態」かつ「仕事を探している」状態の時の生活費を補うものです。今、専業主婦であったり週20時間以下のパートで雇用保険がかかっていないときは特に影響はありません。

開業届を出す=個人事業主として仕事をしている、とみなされますので失業保険の給付の対象とならない可能性も高いです。
副業として個人事業を始めてから会社を辞める場合は十分注意しましょう。

売上が上がらないからと言って開業しているのに失業給付を受給してしまうのは、不正受給に当たります。

 

事業所得として記帳の義務が発生

「その他」の収入である雑所得と違い、開業届を出せば「事業所得」として申告することになります。

色々なメリットがつかえるということは、それなりにきちんとした処理が求められます。
その一つが『記帳』です。
白色・青色申告にかかわらず開業したら記帳の義務がありますので「レシートだけ取っておけばいいや」とはなりません。
記帳には基本的な知識を身につける必要がありますので、それすらをメンドウクサイと思うようなら個人事業主には向いていません。
その場合は開業届を出すのはやめましょう。

 

売上がなくても扶養を外れてしまう人もいる

上記の二つは女性でも男性でも扶養内でも関係ありませんが、扶養内の方が開業届を出すうえで一番気を付けていただきたいのはこちらです。

『扶養内』というのは実は「税法上の扶養」「健康保険上の扶養」に分かれています。

税法上の扶養は全国一律・誰でも基準は一緒です。
課税所得と呼ばれるいわゆる「もうけ」が少なければ扶養に入っていることができます。

問題は「健康保険上の扶養」です。
こちらは、扶養に入っていられるかどうかの判断はそれぞれの運営機関が決めています。かなりグレーな部分が多いです。
ご主人が加入している健康保険の組合(健康保険証に書いてあります)によっては「個人事業主」はどんなに収入が少なくても、扶養に入れないというルールがあるところもあります。
また、どれくらいの収入になったら扶養を外れるというのも基準が違います。

開業届を出す前にきちんとルールの確認をしておきましょう。

▼起業して社会保険を外れてしまうケースはこちらの記事で確認できます。

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まとめ

  • 開業届の最大のメリットは「青色申告ができるようになる」こと
  • 扶養内ママが注意するべき最大のデメリットは「扶養を外されてしまう可能性があること
ナナコ
起業とは準備が必要なもの。
見切り発車は思わぬ損をすることがあります。
前もって調べることも自己責任で行うようにしましょう。

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