夫婦ともに正社員のご家庭の家計相談を受けることが多くあります。
結婚前から夫婦がそれぞれ収入があるので、いくつかの費目を夫の口座から払い、生活費は一定の金額をもらっている。独身の時からの支払いはそのまま各自でなんとなく別財布のまま過ごしている。
子どもが産まれてお金がかかるようになってきたので負担について相談したい。
でも家計の話をしようとすると「俺は十分に払っている」「無駄遣いなんてしていない」と不機嫌になる。
一緒に出掛けるとどちらが出すかで嫌な雰囲気になってしまうので、結局自分が払ってしまっているけれど、これだと自分ばっかりでしんどい。
こんなことありませんか?
子どもという共有の財産を持った場合は、独身時代のようなお金の使い方ではいけません。
ひとつの家庭として考えていく必要があります。
夫婦でお金の話ができない問題と対策について考えます。
相談事例:夫とお金の話ができない
共働きのご夫婦の奥様からのご相談内容はこのような内容でした。
・結婚してからずっと夫婦別財布です
・夫から生活費としていくらかもらいます
・夫は携帯や車ローン・保険など払っています
・子ども関係は妻が払います(学資保険・保育料含め)
・それ以外はほとんど妻で、負担が増えています。
(子供が増えると同時に)
・夫は自分より働いているのに収入は自分と変わりません
・私の給料と夫からの生活費では足りません
・自分の貯金を取り崩しています
★家族で出かけるとどちらが出すかで嫌な雰囲気になります
★生活費が足りないというと
「俺はちゃんと渡してるし浪費もしてない」と、険悪になり話し合いになりません。
あるある、と思うかもしれませんね。
別財布でやってきているご夫婦には比較的よくあることです。
険悪までとはいかなくとも、支出の不公平感を感じていることも多いもの。
今まで何の問題もなかったからこそ、話し合いが上手くいかないのですね。
家庭の問題点とその解決策を探っていきましょう。
問題1:「どっちが払う」で不公平感がある
お話を聞いていると「これは夫が払う」「これは妻が払う」という、夫婦での費目の区分けが強くありました。悪く言えばお互い縄張り意識が強いのです。
夫の口座から落ちているものも「それは私がお金を渡して払っている」などと、お金の出所が夫なのか妻なのかをしきりに気にしているようです。
そのせいもあって、お金が家計の中で行ったり来たりしたり、日常的に固定費として払うもの以外(外食や旅行などの費用など)は特に「どっちが払う?」となっていることが分かりました。
こうなってしまうと、例えばせっかくの楽しい旅行や外食などもギスギスして、だんだんと憂鬱になってしまいますね。
夫婦別財布であったとしても二人の目標の貯金が順調に出来ていたり、なんとなくでも不公平感を感じずに使い分けができている場合はそのままでも構いませんが、このご相談者様のように「私だけが大変」だったり「多分あっちも貯金もしていない気がする」だったりしたら、見直すタイミングです。
対策1:縄張り意識をなくし「家族のお金」と考える
この問題は「考え方」を抜本的に変える必要があります。
子どもを持つ親になったわけですから、自分の稼いできたお金を好きに使っていい時期は終わっています。
もちろん1円残らず家族のものとする必要はありませんが、収入は原則として「家族のもの」という意識を持ちましょう。
そこからそれぞれ個人の財産へ振り分けましょう。いわゆるお小遣いのように固定費にしてしまうことをお勧めしています。もちろんこれは夫婦ともにです。夫は小遣い制だけれど妻は家計費の中から区分けなく使っているなどは、使いすぎや夫の不信感の温床になります。
個人のお金を取って、そこから家族のお金として入金するというスタイルでもいいですが、そうなると「給料が増えた・減った」時に家族として対応しにくくなります。
夫が稼いできた額・妻が稼いできた額、ではなく「家族として稼いできた額」として縄張り意識をなくせば、どっちが稼いでいてもいいわけですし、どちらが負担するという概念がなくなります。家族にかかるお金は家族のお金から。
夫婦それぞれ口座があったとしても「どっちも家族のお金の口座」と考えます。
問題2:感謝の不足
自分は時短で給料が少なくなっているけれど、夫は遅くまで残業して家のことをするわけでもないのに、時短の自分と同じぐらいの収入しかない、それも不満に思っているようでした。
どうしても女性は「男の方が稼ぎが多いのが普通」と思ってしまうことがあります。でも、業種や働き方によっては女性の方が収入が多いことも増えていますし、何よりそれを嘆いたところでいい方向には進みません。
「稼ぎが少ない」と言われれば、男性は特にいい気持ちはしませんよね。
その態度で話し合いをしようとすれば、建設的な話し合いにはなりにくいものです。
対策2:感謝し、お金の話以外のコミュニケーションを
確かに自分の方が収入が多いとしても、夫の収入がなくなったら今のような生活は出来なくなります。夫の収入もあるからこそ今の暮らしができることを忘れないようにしましょう。
もしかしたら「私だって働いているんだから稼いできて当たり前」と思っているかもしれませんが、それはあまりにも可愛くない態度。自分だって「家にいる時間が長いんだから家事育児をして当たり前」と言われたら、やっぱり嫌ですものね。
ずっと共働きで扶養に入ったことなどがない場合はつい相手に対する「感謝」忘れがちになります。
夫婦はチーム。
”当たり前のこと”にあぐらをかかずに、まずは働いてきてくれることへの感謝を自分から先に口に出して伝えましょう。
日本人はお金の話をすることに慣れていないので小さなことですれ違いが起こりがちです。
普段からコミュニケーションが取れていない状態でお金の話だけするのは至難の業だと思ってください。
日常的に、子供のことや生活のこと。お互いの仕事のことや今後の暮らし方ややりたいことなどを話し合える環境づくりが必要です。もし、そもそも夫婦での会話がないようだったら、急がば回れでお金の問題より先に積極的にコミュニケーションを取り合いましょう。
問題3:問題提起・伝え方が抽象的
これは女性にはありがちなのですが、伝わるように話していないことがよくあります。
「生活費が足りない」「私の方が負担が大きい」「もっと貯金したほうがいい」
何も間違っていることは言ってない!と思うかもしれません。
でも実は夫と話し合うには抽象的。これでは伝わりづらいのです。
もともとコミュニケーションが十分でない状態で、男性にとっては理解しにくい「抽象的な不安」を言われると、「収入が少ないことを責められている」と感じてしまいがちです。
責められたと感じた男性が取る反応は「攻撃 or 逃亡」
言い争い(攻撃)のようになってしまったり、だんまり(逃亡)になって険悪になるということが起きてしまいがちです。
心当たりがありませんか?
対策3:とにかく数字で全体を説明する
「不安」だとか「足りない」だとかは、女性同士では共感できるかもしれませんが、こと男女間においては通じない言葉だと思ってよいかもしれません。
一生懸命に言えばいうほど夫は混乱して「だからどうしろっていうんだ」となってしまいます。
これを避けるためには、とにかく「具体的」に説明しましょう。
そのためにも、一度かかっているお金をすべて洗い出します。
いくらの収入があって、いくらの支出がある。この先の何のためにいくら貯金が必要。
洗い出すときは「家族のお金」と「自分のお金」は分けておくことも大事なポイント。
「夫は使える額を限定するのに家計を預かる妻は使い放題」にならないようにしておきましょう。
相手に要求する前にまず自分がやっておく。それが信頼の積み重ね方かたかもしれません。
情報をプレゼンするときはタイミングを見るのも大事。
疲れているときには前向きな話し合いはしにくいものです。
なかなか機会がない場合は「これからについて話し合いたいから時間を取って」と時間を作り出します。
自然な流れで話し合う方がいいこともありますが、なんとなく忙しさに流されてしまう場合はきちんと向き合う時間を作る方がいいですね。
話をするときは、あれこれごちゃごちゃ言わずに一枚の紙にスッキリとまとめましょう。細かい話は聞かれてからで十分。
まるで仕事みたいですが(笑)「伝わるように伝える」は思いやりです。
合算家計で「安心・貯まる」を目指そう
老後に収入が減り、支出の方が多くなる時にも暮らしていけるように「暮らしにいくらかかっているのか」を洗い出しておくことは必須です。
夫婦別財布で老後もずっと暮らしていければいいのですが、年金で足りないのならその不足分を準備しておかなければなりません。
お金の話をしようとすると、どうしても「足りない」とか「もっと節約しないと」などを言われるような気がして、気乗りしないものです。
でも、そもそも話をするのは「これからの二人の将来をより明るくするため」のはず。
その本来の目的を間違えず、伝えることを怠らないこと。
あとは事前準備をしっかりして、手順を間違えずに夫婦でオリジナルの家計を作っていけるといいですね。
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