このようなご質問をいただきました。
一般的に、つみたてNISAやiDeCoなどで投資をして出た利益は扶養に影響しません。
ただ、それ以外の場所でする投資、あるいは受け取り方によっては扶養に影響することもあります。
今回は「投資の利益と扶養」について考えていきましょう。
税金の扶養と社会保険の扶養は分けて考える
扶養についての回答をする前に必ず押さえておいて欲しいのは、ひとことで扶養といっても「税金上の扶養」と「社会保険上の扶養」ではルールや基準が全く違うということです。
それぞれ考え方が違うので、混ぜてしまうと正しい理解ができません。
別の制度として一つずつ情報を整理していくようにしてください。
ここでは簡単に税金の扶養と社会保険の扶養を整理します。
なお、どちらも「配偶者(夫や妻)」の扶養になっている場合です(親や子の扶養に入っているときは考え方が違いますので注意してください)
この記事では「夫が妻を養っている」前提で記載しますが、妻が夫を養っているときも同じ条件です(男女の差はありません)
税金の扶養は「所得」で決まる
税金の扶養というのは、簡単に言うと「妻を養っているから税金を安くしてください」と、養っている側(夫)が税金の計算上有利にできる制度です。正しくは「配偶者控除」(完全扶養)「配偶者特別控除」(一部扶養)を受けることができる、などと表現します。
これらの控除を受けるためには、妻に所得制限があります。
配偶者控除を受けるためには「所得」が48万円以下である必要があります。配偶者特別控除は133万円以下です。
(夫の所得が900万円を超えるときはさらに制限があります)
ここでのポイントは、「年収」ではなく「所得」ということです。
所得というのは簡単に言うと「もうけ」の部分のことを言います。
お店でものを売っていることイメージしてもらうと分かりやすいと思いますが、売った代金はもうけではありません。なぜなら売る材料を買うなどして仕入れをしたり、他にも経費が掛かるからです。それらの経費などを引いた後の残りが「もうけ」ですね。
給与の場合は収入からもうけ(所得)が自動計算されるため「年収が分かれば所得が分かる」ことになっています。
『給与年収103万円=給与所得48万円』といった形です。
このように、所得(もうけ)を計算して税金を納めるのが年末調整や確定申告です。
iDeCoやNISAは確定申告不要
iDeCoやNISA・つみたてNISAで得たもうけは確定申告の必要がありません。
これらの口座では「運用益非課税」といって、もうけにはそもそも税金がかからないので利益も損失もないことになります。
そのため、扶養を判断するときのもうけ(所得)としてもカウントされません。
では、iDeCoやNISA以外で投資をする時はどうでしょうか。
証券会社で投資をするときには口座の種類を始めに選択することになっています(後から変更することもできます)
選択肢はこの3つです。
- 一般口座
- 特定口座(源泉徴収なし)
- 特定口座(源泉徴収あり)
このうち1の一般口座を選んだ場合は原則、自分でもうけの計算をして確定申告が必要です。
2の特定口座(源泉徴収なし)を選んだ時はもうけの計算は証券会社がしてくれますが、確定申告で税金の精算が必要です(もうけの額によっては申告不要のケースもあります)
3の特定口座(源泉徴収あり)はその口座内で税金計算から精算まで完結するため、確定申告の必要はありません。
いずれも持っている間に評価額が増えていたとしても、売却して利益が確定しないうちは申告は不要です。
確定申告で計算して出たもうけは、扶養に入れるかどうか判断する「所得」にカウントされます。
例えば「特定口座・源泉徴収なし」で株式を売却して、年間のトータルで利益(もうけ)が50万円出た場合は税金の扶養を外れてしまいます。
主婦で無職であったり扶養内パートであったとしても、これらの確定申告が必要な口座での利益は税制の扶養に影響が出ることに注意しましょう。
社会保険の扶養は「継続的な収入」で決まる
では、社会保険の扶養はどうでしょうか?
社会保険の扶養のルールは、夫が加入している健康保険組合が細かいルールを決めているので、最終的な確認は必ずご加入の組合にしていただくことになります。
一般的には被扶養者(扶養に入れる人)として認定される条件は、向こう一年の収入が130万円(60歳以降は180万円)となっていることが多いです。
パートの場合は見込み130万円、つまり月収108,333円が目安になります。
この金額としてカウントされるのは「継続して入ってくる収入」です。
この収入は税金の扶養と違い「もうけ」ではありません。
パート収入はもちろんのこと、起業の収入や不動産収入、傷病手当金や遺族年金なども収入とカウントされます。
こちらは「全日本空輸健康保険組合」の収入の例です。
http://www.ana-kenpo.jp/qa/qa01.html
投資の収入は継続的かどうかが判断ポイント
投資で入ってくるお金が収入としてカウントされるかどうかは「継続的に入ってくるのか」それとも「たまたま、一度限り」なのかによって違います。
例えば、NISA(つみたてNISA)口座で株式や投資信託等を売却した場合は、その取引は一度限りなので基本は「継続的」なものとはみなされません。
これに対して、保有している株式の配当金が毎年入ってくるような場合は「継続的なもの」と判断される可能性もあります。配当金が再投資になっているときはそもそも収入にはなりませんが、定期的に受け取っているときは金額によってはあらかじめ健康保険組合に確認しておくほうが良いでしょう。
iDeCoの分割受け取りや個人年金保険は収入
iDeCoは受け取るときに一括受け取りと分割受け取りを選ぶことができますが、分割受け取りの場合は「雑所得」として公的年金と同じように取り扱われます。
公的年金収入は収入・所得の計算に入りますので、金額によっては扶養を外れる可能性があります。iDeCoを受け取ることができるのは一般的には60歳を過ぎてからですが、その時も夫の扶養に入るときは受け取り方にも注意が必要です。
また、投資とは少し違いますが、民間の保険会社で加入する個人年金保険の受け取りにも注意が必要です。
個人年金保険の受け取りは、公的年金とは別の「雑所得」に分類され、もうけの部分が税金の扶養の計算の対象になります。『お宝保険』といわれるような元本に対して受け取る金額が大きい古い契約があるときは気をつけましょう。
また、社会保険の扶養は個人年金保険のもうけの部分ではなく、税引き前の金額が収入としてカウントされます。
60歳~70歳までの間に10年などという受け取り方をするときは、同様に扶養の条件に気を付けるようにしておきましょう。
まとめ
税金の扶養には影響なし。つみたてNISAで売却する投資信託は継続的なものでないため、通常は社会保険上の扶養にも影響しない。◆iDeCoでの投資
投資・運用している間は扶養に影響なし。受け取り時には金額(雑所得の額)によっては税金上の扶養に影響あり。分割受け取りをする場合は金額(収入)によって社会保険の扶養にも影響があるケースも。
◆それ以外の証券会社での投資
特定口座(源泉徴収あり)の口座内での投資は税金上の扶養への影響はなし。確定申告が必要な口座の場合は利益によっては税金上の扶養へ影響がある。
配当金など継続的に入ってくるもの以外は一般的に社会保険の扶養への影響はない。
金額やそのほかの収入状況によって、実際にどの程度の影響が出るのかはケースバイケースです。
自分が持っている資産がどこでどんな状況なのか、その他の収入の状況や自分の加入する健康保険組合の扶養のルールはどうなっているのかを必ず確認しておくようにしてくださいね。