家計の個別相談会にいらしていただいたお客様が、こうおっしゃいました。
「負の連鎖の被害者は、私たちの世代で終わりにしたい」
(ちょうど私と同じ年の30代のお客様でした)
いま、「老後破産」「下流老人」「貧困老人」そんな言葉があちこちで聞かれます。
子育て世代の私たちには、そんな遠い先のことは一見関係なさそうに思えますが、誰もが紙一重でこの「老後破産」のそばにいるのです。
負の連鎖・貧乏の連鎖とは
私たちの親世代以上の年代は、お金の話をすることを良しとしません。
みっともない、恥ずかしい。
そんなこと外で話すものじゃない。
そういう風に隠していて、子供ですら、親の本当の経済状態が分からないことがほとんどではないでしょうか。
いざ、年金生活になったら、全然貯金がなかった。
ひどい場合は、年金を払っていなかったなんてこともあります。
病気になっても、貯金もないのに保険にも入っていなかった。
貯金を取り崩しているのに、贅沢としか思えない暮らしを変えない。
こちらの言葉は聞く耳を持たない。
そうやって相談に来るかたもいらっしゃいます。
夫の親にしている仕送りが負担だけれど、嫁の立場から何も言えない。そんなケースも耳にします。
どこか他人の老人の貧困に対してはそれほど興味が持てないかもしれません。
もしかしたら、「自業自得」「ほおっておけ」なんて思いがよぎる方もいるかもしれません。
ですが、それが「自分の親」だったらどうでしょうか。
援助なんてしたくない。知らない。と思っていても、目の前で困っていたら手を差し伸べずにいられるでしょうか。
現状、そういうケースはどうなっているか?
子供たちが、結局援助
しているケースがほとんどなのです。
子供たちとは、今まさに子育て世代の30代・40代です。
子世代も、楽に暮らせている家ばかりではありません。
教育費や住宅ローン、自分たちの生活だって、人並みにしようと思ったら支出はそう少なくはありません。
昔と違い、正社員で就職してコツコツ働いていれば給料が徐々に上がる時代ではないのです。
それでも、親だからと仕送りします。
今度は、子世代の子(私たちの子供)の教育費がたまりません。
教育費は何とかなっても、自分の老後費用がたまりません。
親世代の援助を続け自分たちの老後が守れない。
自分たちの老後で、同じことが起こります。
仕送りとまではいわなくても、入院した場合のお金がない。
年金を払っていなくて、介護すらまともに受けられない。
二世代の住宅ローンを組んでいる。
親の家のローンを夫が持っている。
そんなのも同じようになっていきます。
これが負の連鎖です。
本当の負の連鎖とは、お金がないことじゃない
負の連鎖は断ち切れるはずです。
貧乏の子は貧乏だなんて決まりはありません。
ただ、
「お金の勉強」をすることがほとんどない現状、
親の『お金の生活習慣・経済観念』は高確率で子供に引き継がれます。
親のお金の使い方が、そのまま子供の経済観念を創り出します。
本当の負の連鎖とは、こちらだと思うのです。
負の連鎖を生み出しやすい家計にはこんな特徴があります。
家族単位での視点を持っていない
共働き世帯に多いのが、家計が同一会計になっておらず、お互いの財産状況が把握できていないということです。
お互いに「今」は困ることはない。一緒にするタイミングがない。めんどうくさい。見られたくない。
そんな理由から、相手の財産状態を全く知らないという夫婦も多いです。
死ぬまでお互いが独立会計で維持できるのならそれでもかまいません。
ですが、どちらかが働けなくなった場合。あるいは定年を迎えどちらも働けなくなった場合、その時も自分の収入だけで死ぬまで成り立つでしょうか。
お互いの収入は「家族」のもの。
縄張り意識を持ちすぎず、共有の財産を二人で育てていく観点が抜けていると、「貯めてくれていると思っていたのに」ということが起こりかねません。
それは、どちらかの収入がなくなって今の形が崩れたときでは手遅れになるのです。
どちらか一方に経済的依存度が高い
親世代の老後貧困の始まりは、このケースも多いかもしれません。
男が外で働き、妻は家で子供を育てる。
以前はそれでも成り立ちました。
夫は妻子を養えるだけの収入が手に入ることが多く、ライフスタイルは多くの方が似たようなものだったのです。
備えるべきリスクの種類は限りがあり、そのための支出もそれほど多様ではありませんでした。
ですが、バブル崩壊後、日本の経済成長は滞り、夫だけが働けば問題なく老後まで暮らしていけるというモデルケースは減っています。
ある日突然会社都合で職を失い、非正雇用になるなどのケースも、決して他人事ではないのです。
そんなとき、経済的に自立するすべを全く持たない構成員が家族内にいると、一瞬で貧困に傾きかねません。
経済的自立=稼ぐ能力は一朝一夕に身につくものではありません。
実際に、ずっと専業主婦でやってきた母親はまったく稼ぐすべを持たず、どんなに父親に理不尽な対応をされても「いまさら出ていったら暮らせない」からとずっと我慢しながら暮らしていくという話は驚くほどありふれていますし、一家の大黒柱である父に万が一の不幸があって、一気に貧困状態になってしまったという話も、決してドラマの世界だけではありません。
少しでも自ら稼ぐことをしている場合と、まったく稼いでいない場合では、踏み出せる一歩が違います。
「キャリアプラン」は現代を生きる女性が負の連鎖に巻き込まれないために持っておくべき知恵の一つです。
マネーリテラシーが低いまま
マネーリテラシーとは、「健全に暮らしていくために、最低限身につけるべき金融や経済についての知識と判断力」です。
「生活スキル」の一つですが、日本人は驚くほどこれが欠けていると言われています。
そのため、国を挙げてマネーリテラシーの向上を図っています。
生まれてから死ぬまで誰もが密接にかかわる「お金」を使いこなすスキルなしに、安全安心に暮らして行けるはずがありません。
ほとんどが同じ暮らし方をしていた場合は、みんなに合わせておけばほとんどの場合が大丈夫でした。
ですが、今は完全に多様化しているのが現状です。
みんなと違う状況なのに、みんなと同じことをしていて平気なはずがありません。
では、どうすれば?
そのために必要なのが、知識と判断力というマネーリテラシー。そして行動力です。
貧乏の連鎖を断ち切るのは、あなたです
親が自分自身の経済状態をきちんと把握していない。
把握しているのに、外からの見え方(見栄)を優先して、それにふさわしい行動をしない。
これって、
「自分の家計がどうなっているか把握していない」
「お金のため方・使い方がわからない」
「全然お金を貯めていない」
「まずいとわかっているのに、きっと何とかなるとそのまま」
これと、同じ状況じゃないですか?
でもこれだって、マネーリテラシーを身につけ行動すれば、断ち切ることができるのです。
今からなら、十分間に合う。
ママが子供たちのお金の教科書になれるような、お金の使い方を学ぶことができる。
だから”ママにこそ”知ってほしいのです。
他人を変えることはできません。
ましてや、
60歳過ぎまでお金と向き合わず生きてきた人を子供たちの立場から変えるのは、相手のプライドや生活習慣も相まって非常に困難なのです。
親 ー(A)ー 自分 ー(B)ー 子供
という負の連鎖の、親から受けた(A)という貧乏の影響を今から断ち切ることはできません。
あなたが断ち切ることができるのは、(B)という子世代への負の連鎖なのです。
私たちの世代で、負の連鎖を断ち切りたいのです。
コツコツ働いてさえすれば安泰だった時代は、残念ながら終わっています。
だからといって、身を削って働いたり、大きなリスクを背負って投資などしなくても、負の連鎖は断ち切れます。
安心して暮らしながら、お金ではなく「知識という財産」を子供に贈ることができるのです。
自分に関係するお金の知識を、正しく知り・実行していくだけ。
いま、貯まらない家計なのだとしたら、それは負の連鎖にはまっているかもしれません。
でも、縁あってこのブログにたどり着いていただけたなら、それを断ち切るのはそう難しいことではないかもしれませんよ。