小さいときはそんなにお金がかからなかったけれど、中学・高校になるにつれてもっとかかるお金が増えていくのかな?
高校無償化とは言うけれど所得制限があるというし、年収も「目安」と書いてあるのでよくわからない。
うちは共働きで目安は超えちゃってるからもう全くもらえない?実際は何を見てどうやって計算したらいいの?
そんなご相談をいただきました。
この記事ではご相談者様の実例を見ながら、高校の授業料無償化(就学支援金制度)についてみていきましょう。
なお、今回は「神奈川県に住んでいるご相談者様の子どもが、神奈川県内の全日制の高校に進学した場合」で計算していきます。お住まいの地域・年度によっては計算方法は補助額などが変わりますので、必ず事前に確認するようにしてください。
高校授業料無償化とは?
義務教育だった小学校・中学校と違い、高校へ進学すると授業料がかかります。
ですが、2010年より生徒の学習を支援するために高校無償化が始まりました。
授業料は申請手続きをすることで、授業料は国が負担し直接高校に支払われ、生徒は授業料を負担することなく高校で勉強することができます。
この制度のことを「高等学校等就学支援金制度」と言います。
2010年から開始され、対象の生徒は授業料が実質無償になります。
例えば児童手当のように、国からお金を受け取ってそれを学費に充てるのではなく、直接学校に支払われるため手続きをしないと無償化になりませんので注意が必要です。また補助の金額は授業料が上限ですので、授業料の方が安い場合でも現金等が給付されることはありません。
当初は公立高校のみでしたが、2020年からは無償化の範囲が拡大され私立高校も支援が拡大されました。
国からの補助以外に神奈川県からの補助として「授業料補助」「入学金補助」も一定の所得までは給付を受けることができます。
(これらは貸付ではないため返済の必要はありません)
ただし、誰でも授業料が無償になるわけではありません。
世帯の年収に上限が設けられており、それに該当しない場合は一部・または全額が自己負担となります。
受けられる支援の金額と所得区分はこのようになっています。
令和6年度私立高等学校等の学費支援制度のご案内リーフレット(PDF)より筆者作成
所得制限の計算の仕方
パンフレットなどには年収の目安が書いてありますが、共働きだったり控除が多かったりする場合はこの年収はアテになりません。
正確な金額は『市町村民税の課税標準額×6%ー市町村民税の調整控除の額』で計算します。
とはいえ、これを自分で計算するのは手がかかるため、住民税の通知書(毎年5月ごろに会社を通じて交付される明細)を使ってみていきます。これがない場合は市役所等で課税証明を取得したり、マイナポータルで確認することもできます。
今回ご相談いただいたのは共働きのご夫婦のため、それぞれの住民税の明細を見て計算していきましょう。
まず1枚目(夫の分)はこちらです。
ピンクで塗ってある部分が「課税標準額」です。この金額に6%をかけ、そこから市町村民税の調整控除の額を差し引く計算です。
問題は調整控除の金額がパッとわからないケースです。
調整控除は⑤の税額控除の一部です。
ですが、この⑤は調整控除以外の税額控除も合計されて記載されています。主には「ふるさと納税」や「住宅ローン控除」の額がこの⑤に入ってきます。
調整控除以外の住宅ローン控除やふるさと納税の控除額は差し引くものができない決まりです。
控除の内訳は摘要欄に書いてあることが多いのでそちらを確認してみましょう。
今回の例では⑤21,973円のうち20,473円がふるさと納税(寄付金控除)なので、それを差し引いた差額の1500円が調整控除の金額だということが分かります。
そのため「2,203,000円×6%ー1500円=130,680円①」が所得区分の基準となります。
つぎは2枚目(妻の分)です。
こちらは⑤の税額控除は調整控除のみで1500円です。
所得区分の金額は「2,071,000円×6%ー1500円=122,760円②」です。
共働きの場合は夫婦それぞれの金額を合算しますので、①130,680円+②122,760円=253,440円。
今回のご相談者様のご家庭の所得区分を判定する金額は253,440円です。
先ほどと同じ支援金の表を見てみると『⑦ 304,200円未満』の区分に該当することが分かりました。
こちらのご家庭は多子世帯には該当しませんので、受けられる補助は、国からの高等学校等就学支援金の118,800円/年 のみということになります。
※実際には適用する年の収入によるので、必ずしも高校進学時にこれらの支給を受けられるとは限りません。
年収はあくまで目安。大きく違うことも
パンフレットで見ると、今回のお客様と同じ支援金を受け取ることができる年収の目安は「910万円未満」でした。
ですが、このご夫婦の年収は二人合わせて実際は「1100万円」を超えています。
やはり目安の年収だけで判断すると大きく違ってくることもありますね。
入学年度は対象外になっていても、兄弟姉妹が高校生になったことで控除が増え税額が下がったり、多子世帯に該当することによって補助が増えることもあります。初年度で対象外だからと言ってあきらめないようにしてください。
所得制限にかかりそうな収入のときは、概算の年収ではなく正式な計算式から算出したいところです。
年収が目安より多いにもかかわらず支給が受けられる理由は、税金計算のから差し引くことができる「所得控除」の金額が多いからです。
所得控除は「生命保険料控除」「社会保険料控除」「扶養控除」など、合わせて15種類あります。
自分で増やすことができるものはそうは多くありませんが、iDeCoの掛金が全額差し引ける「小規模企業共済等掛金控除」や「医療費控除」などをの控除をうまく使うことで、所得を少なくすることができます。
節税にもつながりますので、ぜひ一度自分の税金がどのように計算されているのかじっくり見てみるのもいいかもしれませんね。
高校生活は授業料以外にもこんなお金がかかる
また、授業料は無償・支援が受けられたとしても、高校に通うためには
- 教材費
- 制服代
- 通学交通費
- 部活動費
- 設備利用料
- 任意の寄付金
そのような付随費用が掛かることは十分考えられます。
これらの費用は学校によって金額が大きく違ってきます。また、大学受験を見据えての塾や予備校代の負担もかかる可能性がありますね。
その点も踏まえて家計では心構え・計画的な準備をしておくようにしましょう。
こちらの動画でも同じ内容を解説しています。
音声で聞きたいときはこちらもご覧になってみてくださいね。
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