夫の税金上の扶養に入っている場合は年末調整の時に妻のことを記入して提出しますね。平成30年分よりその「妻(夫)の扶養」について大きなルール変更がありました。そして2020年からはさらに基礎控除のルール変更と、調整控除の申告が必要になりました。
さらにさらに、2024年(令和6年)は定額減税もあるため、用紙の名前が・・・・・長い!!!!!!
『令和6年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書』
の書き方にを画像付きで解説します。
動画でも解説しました。動画の方が見やすいときはこちらもご利用ください。
(こちらの動画は定額減税についての記入は対応していません)
自分のペースで確認したいときはそのまま下にお進みください。
まずどこに誰のことを書くのかわかりにくいのでその判断から
この用紙には「あなた」という言葉と「配偶者」という言葉が出てきます。混乱しますね。
ここでいう「あなた」=この紙をもらってきた人のことです。
夫がこの紙を会社でもらってきて妻が扶養に入ろうとしている場合は、「あなた=夫」「配偶者=妻」です。これを勘違いするとよくわからなくなりますので、こちらの画像で確認してください。
(※もちろん妻が夫を扶養しているケースで妻の年末調整の紙に夫のことを書こうとする場合は「妻」と「夫」が逆になります)
青枠が「夫」の部分、赤枠が「妻」の部分です。
また、2020年に新設された調整控除では年収850万円以上の人が「障害者・23歳未満の扶養親族」について記入するところもあります。
名前などの基本情報の部分に関しては悩むこともないでしょうから、先に書いてしまいましょう。
ただし個人番号(マイナンバー)に関しては、会社ごとに取り扱いが違ってきていますので、会社の指示に従ってくださいね。
では、以下の手順で記入を進めていきましょう。
ステップ1:あなたの合計所得金額(見積額)の算出
上から書こうとすると迷子になりがちですので、まずは真ん中から記入します。
ここでいう「あなた」は、この用紙をもらってきた夫のことですね。
給与収入以外がある場合はそれぞれ所得を計算する必要がありますが、今回は給与収入のみある場合について解説いたします。
自分の勤める会社の給与収入については(1)の部分に記載します。
ステップ1-1 給与所得の計算
1/1~12/31の間の給料やボーナスを合計します。給与明細を出してきて足していきましょう。残業代や手当は含みます(交通費は通常入りません)
この用紙が配られた時点では、おそらく年末までの残りの金額は確定していませんので「(見積額)」と書かれているのですね。
ここまでもらった金額と、この後貰うだろう金額をざっくりと足しこんで記入すればOKです。この用紙を提出する会社で働いているのなら、会社は払った給料を正確に把握できるので、それほど神経質にならなくて大丈夫です。
次にその収入から「所得金額」を算出します。
配られた裏面に目が痛くなるような小ささで計算式が書かれています。
でっかくしておきました。でも小さい(-_-;)
★★計算例
年収が5,000,000円になりそうな人 (a)=5,000,000
(※上の図の下から3段目に該当します)
1:(a)5,000,000÷4=1,250,000=(b)
2:(b)1,250,000×3.2-440,000=3,560,000円
所得金額は3,560,000円
これで自分の年収が500万円の人の給与所得の見積額は356万円だという計算ができました。これを右側の「所得金額」に書き込みます。
ステップ1-2 給与所得以外の所得の合計金額
ここは給与以外の所得がある人だけ記入します。
副業で起業している、不動産所得がある、確定申告を必要とする雑所得(FXの利益など)があるときは、自分で所得の見積額を計算して記入します。
(確定申告を必要としない程度の副業や、NISA・iDeCo・源泉徴収アリの特定口座などでの資産運用は記入しなくてOKです)
ここは会社は把握ができませんので、自分でしっかり計算が必要です。
もちろん見積もりですし、おそらく確定申告するでしょうから、結果的にズレたとしてもさほど問題はありません。
ステップ2:夫の条件の判定(区分Ⅰ)と基礎控除の額
給与の所得(ステップ1-1)とその他の所得(ステップ1-2)の合計を合算し、その数字を見て「区分Ⅰ」と「基礎控除」「定額減税の対象か」を記入します。
先ほどステップ1で計算された「所得金額」を青枠に転記し、それをもとに下の控除額の計算で「判定」を行いましょう。
給与収入が1095万円までは「900万円以下(A)」
給与収入が1145万円までは「900万円超950万円以下(B)」
給与収入が1195万円までは「950万円超1000万円以下(C)」
給与収入が2000万円までは「1000万円超1805万円以下(D)」
どこに該当するかを計算し、(A)(B)(C)(D)を区分Ⅰの欄に記入しましょう。
A~Dに当てはまる場合(要は給与だけなら2000万円までの人=会社で年末調整できる人。ほとんどの人)は「本人定額減税対象」なので、定額減税対象の欄にチェックを入れます。
さらに、D以外(A~C)に当てはまる人は、妻を税金上の扶養にいれることができます(配偶者控除・配偶者特別控除が受けられる)
つまり年収が2000万円までは定額減税の対象となるけれど、1195万円を超えているときは妻を扶養にいれることはできません。
◆年収が1095万円以下
→「区分Ⅰ=(A)」「基礎控除=48万円」
◆年収が1095万円~1145万円
→「区分Ⅰ=(B)」「基礎控除=48万円」
◆年収が1145万円~1195万円
→「区分Ⅰ=(C)」「基礎控除=48万円」
ステップ3:配偶者の合計所得金額(見積額)の算出
夫の判定が出たところで、今度は配偶者(=妻)の判定を行います。
ここは夫の所得の出し方と全く同じです。
ステップ1-1を参考に、今度は妻の分の所得を出しましょう。
妻の分も1/1~12/31までの収入を合計してから給与所得を出していきます。
なお
- 雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)
- 出産手当金/出産育児一時金
- 育児休業給付金
- 傷病手当金
- 障害年金
等は、そもそも税金の対象ではありませんので合計しなくてOKです。
給与以外の収入があるときは同様に見込みの所得を計算します。
計算ができたら、同じように一番下の合計欄にも記載しましょう。
ステップ4:妻の条件の判定(区分Ⅱ)
妻の所得金額が分かったら、その金額がどこに当てはまるか「区分Ⅱ」の判定を行いましょう。
所得が48万円以下(収入103万円以下)で70歳以上だと①。70歳未満だと②になりますね。
あとは上に記載した所得の金額が48~95万円(収入が103~150万円)なら③、95万円~133万円(収入が150~201万円)なら④になります。
所得133万円(収入201万円)を超えている場合はそもそも扶養に入ることができませんので、このエリアに書く必要はありません。
収入103万円以下で70歳以上→①(配偶者定額減税対象)
収入103万円以上で70歳未満→②(配偶者定額減税対象)
収入103万円~150万円→③
収入150万円~201万円→④
収入201万円以上→ここは記入しない
当てはまる番号が分かったところで区分Ⅱのところに①~④を記入しておきましょう。
ステップ5:配偶者控除・配偶者特別控除の額の計算・配偶者定額減税対象かのチェック
夫の条件と妻の条件が分かったところで、いよいよ配偶者(特別)控除の金額を見つけます。
配偶者(特別)控除額というのは、妻を扶養に入れることで夫の税金を計算する「元」を少なくすることができる金額のことです。
ステップ2(夫の判定・区分Ⅰ)が青の部分、ステップ4(妻の判定・区分Ⅱ)が赤の部分です。
それぞれの該当する部分の交わるところが、夫の税金の計算のモトから差し引くことができる金額です。
①②に該当するところに数字がある場合は「配偶者控除」
③④に該当するところに数字がある場合は「配偶者特別控除」になります。該当するなら記入するならどちらか一方ですよ!
該当する方に交わった部分の金額を用紙の一番右下に記載しましょう。
20204年は配偶者定額減税対象へのチェックも確認
2024年は定額減税があるため、妻の所得(区分Ⅱ)を判定するときに①か②に当てはまった場合(つまり、給与のみなら103万以下の収入)は、夫のほうに合わせて妻の定額減税も計算します。
給与103万円以下で配偶者控除の対象になる人は「配偶者定額減税対象」のところにチェックを入れましょう。
③以上(103万超の収入がある人)は自分の年末調整で定額減税を行います。
所得金額調整控除申告書の記入
所得金額調整控除は「給与収入850万円以上」の人だけが関係あります。夫の年収が850万円以下の時は記入は不要です。
所得金額調整控除って?
まずは夫が①のどれに該当するか確認します。
- 夫が特別障害者(B欄に障害の等級などを記入)
- 妻が特別障害者(A欄に妻の情報を書き、B欄に障害の等級などを記入)
- 扶養親族が特別障害者(A欄に障害のある扶養親族の情報を書き、B欄に障害の等級などを記入)
- 23歳未満の子供がいる(A欄に子供の情報を記入)
妻も夫も年収850万円以上で所得調整控除を受ける場合、同じ子供を夫婦それぞれに書いて問題ありません。
(扶養に入れるのはどちらか片方を選ばないといけませんが、ここは夫婦がどっちも記入してOK)
お疲れさまでした!これでこの用紙の記入は終了です!
妻の収入が見積額(見込み)と最終的な結果が違ってしまった場合
夫の収入に関しては刻みが大きいため、よほどギリギリのラインにいない限りは区分が変わってしまうということはないかもしれませんが、配偶者(妻側)は5万円刻みと細かくなっています。
見積もりをするのが例えば10月までの給与で、11・12月分+ボーナスが確定していない場合。または残業代や出勤日数・寸志の有無などによって5万円以上違ってしまうことはありえます。
今の段階で確定した金額を出すことは不可能ですので、見積額で提出して構いません。
ですが、結果として違った場合は訂正しなければならないので、いくらの金額を書いて提出してあるのかは記録しておきましょう。(スマホで写真など取っておくと便利ですね!)
金額が違ってきた場合は、控除の額→夫の税金の額が変わってしまいますので、正しく訂正する必要があります。
訂正の方法は2通り
- (夫の会社に)年末調整のやり直しを依頼する
- 夫の源泉徴収票をもとに、確定申告で訂正する
方法があります。
給与計算及び年末調整経験者としては、年末調整のやり直しは正直面倒なので各自で確定申告してくれるとありがたいな~とは思います(笑)
ただ、翌年の1/31までは「年末調整のやり直し(再年調)」を依頼することが認められています。妻の年間の収入(所得)が確定しだい、もしくは源泉徴収票が出しだい、夫の会社に依頼すると良いでしょう。
いまさら言うのが気まずい・・・と思う場合は、夫の会社に訂正してもらうのではなく、夫が自分で源泉徴収票をもとに確定申告してしまうのが早いでしょう。パソコンが使えれば、国税庁のHPから簡単に作ることができるので、会社とのやり取りが億劫ならそちらの方が早いかもしれません。
いずれにしても、結果が違っていたのに放置すると「脱税もしくは税金の取られすぎ」になってしまう可能性がありますので、十分注意してくださいね!