働いていると年末に行われる「年末調整」。年末調整について学校で学ぶことはもちろん無く、入社したからと言って説明を受ける機会はそうありません。言われるがままになんとなく出している。言われたものを出すと年末にちょっと多くお金がもらえる・・・と思っている方も多いようです。


▼こちらの動画でもお話しています。
毎月お給料からひかれている税金は「所得税」
お給料明細のサンプルを見てみましょう。
(↑赤枠が給与から引かれた所得税)
会社と雇用契約を結んで「給与」をもらっている場合、会社はその給料に応じた税額を差し引いて、国に納めることになっています。
この、給料から差し引かれる所得税のことを「源泉所得税」と言います。引かれる金額はもらう給料の金額や、扶養している家族の数、他にどこかで働いているか、などによって変わります。会社がお給料を計算するときに『源泉徴収税額表』に基づいて差し引かれます。
国税庁:2019年分 源泉徴収税額表
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2018/01.htm
毎月のお給料からひかれる源泉所得税はあくまで「概算」
所得税の計算期間は1月1日~12月31日です。この期間の給料やボーナスなど全部合わせて計算してみて、本来払わなければならない所得税が決まります。
ということは、年の途中では本来いくら税金を払うべきかは確定していません。そのため給料から引かれている源泉所得税は給料が払われた時点での「おおよその税額」なのです。

1月~12月の税金の計算の中で、その年の最後の給料(またはボーナス)が支払われると、その年の合計金額が出ます。
そこから、自分が扶養している家族がいるか、生命保険や地震保険を払っているか、(給与天引き以外の)社会保険料を負担しているか、など個々の事情を年末に申告します。年末調整の時に生命保険のハガキを出したり、扶養している人の名前を紙に書いたりするのが、このことです。
それらの事情から一人ひとりの税金を負担する能力をみて、自分が負担する所得税が決まります。
毎月仮払いしている金額との過不足調整が「年末調整」
毎月の給料から「仮払い」している源泉徴収税額の合計と、本来納めるべき税金には差が出ることがあります。その差を調整することを「年末調整」と言います。
払いすぎていれば還付を受けることができ、支払いが足りなければ追加で払うことになります。


一般的には年末調整の時に、特に何も控除の申告しない場合でも、わずかに「還付」を受ける方が多いので、「年末調整=お金がもらえる」と思っている方も多いですが、実は払いすぎていた自分の税金が返ってきただけなのですね。
年末調整で申告できない「個々の事情」もあります


年末調整は「サラリーマンの確定申告」ともよばれていて、収入が給料だけの人の税金の精算は年末調整で済んでしまうことがほとんどです。
ただ、全ての従業員の個々の事情を加味して税金を計算するようでは会社の事務作業がパンクしてしまいます。そのため年末調整で申告できる項目は「よくあるものだけ」限られているのです。
生命保険料・地震保険料・iDeCoの掛金・扶養のあるなし、このあたりが年末調整でできるものです。
年末調整でできない「雑損控除」「医療費控除」などを申告したい場合は、年末調整が終わった後に会社から発行された源泉徴収票を元に確定申告するとよいでしょう。年末調整で入れ忘れてしまったものや、不要から抜けるのを忘れてしまった場合も確定申告でやり直すことができますよ。

自然災害・盗難等で損害を受けた場合は「確定申告で雑損控除」が受けられます
昨今の自然災害(台風・地震)などで、住宅や設備等に被害を受けた場合は、税金を安くしてもらう制度(雑損控除)があります。
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地震・台風被害にあった場合に税金負担を軽くする救済制度
2019年10月11日~の台風19号で被害を受けた方に心よりお見舞い申し上げます。 一刻も早い安全の確保と復旧が進みますように。 自然災害による損害をなかったこ ...
残念ながら「個別の事情」の大きなものですので年末調整では控除を受けることができません。年が明けたら確定申告で控除を受けることができます。その際には「源泉徴収票」が必要になりますので忘れることなく保管しておきましょう。
日本の所得税は「申告納税方式」です。
自らが責任をもって自己申告し・納税する決まりになっています。
税金について学ぶ機会はなかなかありませんが、「知らなかった」という理由で損することの無いように、身近なお給料に関係するものから知るきっかけにしていただきたいですね。
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